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Re: 僕の涙腺を刺激するもの  アンケート実施中!! ( No.266 )
日時: 2010/12/12 16:52
名前: 風菜 (ID: H1hkB7zj)

『私は……。』
きつく右手を握り締め、一琉はそれを胸に当てた。

『大丈夫だよ。』
強張った頬を上げて、彼女は微笑んだ。
『少し怖いけど……。ここ、元々は図書館だったんでしょ? だから……、本を見たいっていう気持ちもあるんだ。』
この言葉に、咲原結衣菜は頷いた。

『そうだね。一琉は本好きだもんね。そりゃ〜行きたいよねーえ? 』
圧力をかける様な口調で言い、黒光りした目を鋭く少年2人に向けた。
少年2人の体が、ビクッと反応した。

『さあ、どうするどうする? 男子2人。女子2人はすっかり行く気でいますが? まさか女子だけ行って、男はビビって行かない……。なーんて事を、まさかあんた達2人がやる訳なんもんねー? 』

————— 笑顔が怖い、とはこの事だろう。
僕はこの時初めて、『恐怖』というものを覚えた。

恐ろしいと感じているのは、少年2人の同様で、体が震えていた。
ガチガチという音がするのは、おそらく少年2人の歯が噛み合わずに鳴っているのだろう。

『『だ、大丈夫です……!!!! 行きます行きます!!!! 僕達が君達を置いて逃げる訳がありません!!!!! 』』

(可哀想に……。)
と、僕は同情した。

咲原結衣菜は不吉に笑い、一琉の肩を抱いて廃墟へと向かっていった。










————— 廃墟内 —————

廃墟の中は、そんなに暗くもなく、汚い訳でもなかった。一般にある図書館という感じだった。

廃墟内へと進んでいった4人は、思ったよりも普通な内装に、驚いていた。

『へ〜。思ったよりも普通なんだな。もっと幽霊屋敷みたいな風なのかと思ってた。』
『あっ、俺も。』

あんなに怯えていた少年、そして少年Aは、想像と全然違っていた廃墟に、もう怖がろうとはしなかった。
それよりも、1人の少女の目が、きらきらと輝いていて眩しい。

『凄い……。こんなにいっぱい本があるなんて……。』
そう、一琉だ。
彼女は両手を合わせて感激の声を上げた。