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Re: 僕の涙腺を刺激するもの   ( No.309 )
日時: 2010/12/04 12:53
名前: 風菜 (ID: EpPczols)

「最初に伊吹を見た時、全然違っててびっくりしたんだよ、あたし。」

交差した指先を見つめて項垂れた様な姿勢をとり続けている結衣菜は、ゆっくりと話し出した。

「なんか眼鏡とかかけてるし、分厚い小説とかも読んでるし。おまけにテストでは学年1位とかね。案の定あたしに話しかけてこようともしない。そんなの、前の伊吹だったら絶対有り得ない事だったから。だから、すぐ気付いたんだ。やっぱり、あの時、なんかあったんだなって。そしたら、一琉が転入して来たでしょ? 何であんなに、伊吹が変わっちゃってるのかって聞いたら、零に関する事だって言うから……。」

「零? 何でそこで零が……。俺に関する事なのか? 」

「分かんないよ……。」

結衣菜は顔に手を当てた。
泣いているのだ。

そしてその涙を見て、鮮明に蘇えって来る俺の記憶。









崖から落ちた俺を助けようと、レスキュー隊の言葉を無視していつも冷静な零が崖から飛び降りた、と母さんから話を聞いた事。

そして、意識不明重態患者として俺の近くの病室に運ばれて来たのに、物凄い衝撃を受けた事。

俺の見舞いにたった1人で来た、まだ幼い一琉を泣き叫びながら追い返す母さん。
そしてそんな母さんを押さえつける看護士達。

『もうあの子に近付かないで!! 2度とあの子の傍に寄らないで!! 』
『全部一琉ちゃんのせいだわ……。一琉ちゃんのせいで、伊吹は……っ! 』

痛々しい母さんの声。
そしてそれを黙って聞いて、涙を必死で堪える一琉。

事故から1ヶ月が経ち、医師から意識が戻るのは絶望的だと診断され、植物人間になってしまった零。

そしてそれから……。





除々に俺が狂いだしていった事。







「あれは、あたしが仕組んだ事だったのに……。だから、一琉が悪いんじゃない。杏香さんがあんなに怒る事もない。あたしが全部悪いんだ……。」

絞る様に言う結衣菜に、僕は聞き返した。

「えっ、何だよそれ……。どういう事だよ? 」

すると結衣菜はまた話し出した。