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- Re: 僕の涙腺を刺激するもの ( No.318 )
- 日時: 2010/12/04 22:59
- 名前: 風菜 (ID: EpPczols)
第28章 「狂い始めた歯車」
あれは、確かに俺が言った。
雑誌で君の事が取り上げられていた。
IQ180の天才少女だったのだ、と。
彼女は祖母にその才能を見初められたのだ。
だが、幼き頃既に肉親は1人もいなかった。
じゃあ一体俺は、何の事を言っていたのだろうか —
————?
「あの事故が起きた後、あたし、偶然聞いちゃったんだ。一琉が孤児だっていう事。病院に、伊吹のお見舞いに行こうとしたら、看護士さん達が話してて……。」
結衣菜の話を、俺は苦しい思いで聞いていた。
「一琉のお母さんは外国人で、お父さんは日本人なんだって。あの銀髪は、お母さんから受け継いだものだって聞いた。最初はアメリカで、凄い楽しく暮らしてたんだって。だから一琉、あんなに英語しゃべれるんんだと思う。で、今まで普通の家族みたいに暮らしてたのに……。そしたら、後から、一琉のお母さんも知らない事がだんだんと判明して来て……。」
結衣菜は手を組みなおし、意を決した様に言った。
「一琉のお父さんは、重度のアルコール中毒と、覚醒剤中毒だった。だから、お酒飲んでる時は、一琉と、そのお母さんに酷いくらいの暴力奮って、覚醒剤打ったときは、近所中を走り回ったりしてたって……。だから、近所の人達も、一琉達一家を冷たい目で見て、相手にしてなかったって聞いた。」
俺は口元を押さえた。
「本気で殺されるってくらい、その、暴力が酷かったらしくて……。それで耐えかねたお母さんが、一琉を一時期施設に送り込んだんだって。お父さんの事は自分が何とかするから、一琉を絶対に守らなきゃって……。そしたら少し経って……。」
うっ、という結衣菜の呻き声が聞こえた瞬間、俺は結衣菜の顔を見た。
「一琉のお母さん、撲殺されてたって。傍には、お酒のビンが置いてあって……。お父さんは、覚醒剤でラリったまま、階段から、頭から転げ落ちて、頭蓋骨骨折で、即死で……。一琉の両親にも身内はいなかったから、一琉はその日から孤独になった……!!!! 」
結衣菜が泣き叫んだ。
「伊吹と零が言い合っているのを見て、一琉は考えたんだと思う。この関係が、あたし達が仲間だという関係が。あたしが1回、一琉二になら、言ってもいいなって思って、あたしの好きな人が零だって教えた。これは嘘じゃない。だから、小っちゃい頃に、両親が言い争いをして、その挙句に、一気に2人が死んじゃって……!!!!! あたしが零を好きな事と、2人の言い争いを聞いて、きっといろんな事を考えたんだよ、あの子……!!!! だからこれは、あの子の優しさと、あの子が抱えてる傷に気付いてあげられずに、バカな作戦を言い出したあたしが、全部悪いんだよ!!!! あたしが一琉を追い詰めたのも同然で、零が今あんなになって、伊吹の記憶も失って……!!!!!! どれもこれも全部、あたしが悪いんだ!!!!! 」
うああああ、と結衣菜が泣き崩れた。
俺はそんな結衣菜の体をさすろうとした。
その時だった。
俺は、とある疑惑に気付いた。
(何故俺は、あんなにも一琉の過去を完全な物に置き換えていたんだ……? )
俺は考えた。
(何故だ……? 何故あんな……。)
そこで俺はハッとした。
「そうか!!!! そういう事だったのか!!!! 」
いきなり立ち上がった俺に、結衣菜は少し驚いていた。
「結衣菜、安心しろ。お前のせいなんかじゃない。俺達がこんなに狂ってしまったのも、全て計画だったんだ!!!!!! 」
「え……っ? ちょ、伊吹、いきなり何言って……。」
「今は訳が分からないかもしれない。だからあとで説明する。それに、まだ全て俺が今考えている事が真実とは限らない。だからすぐに調べに行く。一刻も無駄に出来ない!!!!! 結衣菜、俺に着いて来てくれ!!!! 」
そう叫んで、俺は無理矢理結衣菜の腕を引っ張った。
『僕の涙腺を刺激するもの』 中編 終わり