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第２９章　「貴方は、もう……」



伊吹、貴方はもう、思い出したかな?



『あの日』の事を……。



私達が出会ったばかりの頃、私が貴方に言った事。



これだけは、まだ思い出せていないと思う。



少し間の抜けた、後先考えずに言った、私の発言。



でもね、思い出さなきゃ、物語はスタートしない。


























—————　まだ、スタートしないんだ。














だから、どうか私の所に来ないで。


















物語は、このまま停止して。















私という登場人物を抜いて、完結して。













救出なんて、お願いだからしないで。













私は、貴方を失いたくない。

















だからどうか、来ないで。



















私は、自分の傷と、悲しみだけを背負って生きていく。
















だから……ね?












「伊吹……。」

私は空を見上げる。














「好きだよ……。」