コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕の涙腺を刺激するもの ( No.338 )
- 日時: 2010/12/14 21:49
- 名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)
第31章 「それがもし本当なら」
さほど大きくもない荷物を持ちつつ、歩き始めた。
荷物がこの程度の大きさでは、明らかにこの場所に不相応で、目立つ。
そうでなくとも、確実に自分は目立ってしまう。
今時でも、遥か大昔でも、たった1人としていないこの銀髪が、ロサンゼルス1を誇るこの空港で。
そう思い、たくさんの欧米人の好奇の視線が当たるのを感じながら、彼女は歩き始めた。
「もしもし、父さん!? 今すぐ家に帰ってこれないか!? 」
「おい伊吹!? 何をそんなに急いでいるんだ!? 」
「それは帰ってこれたら説明出来る!!!!! とにかく、今ここで説明するには長すぎる!!!!! これは、俺達家族にも関わっているんだ!!!!! 」
「!? 」
電話の向こうで、父さんが驚いているのが分かった。
「分かった。じゃあ今すぐ仕事を切り上げていくから。何かする事はあるか? 」
「じゃあ、ウチの自家用ジェットを手配して貰えないかな? 」
「自家用ジェットって……。」
「困るかもしれないけど、どうか宜しく頼むよ。今から……。」
俺は決意した様に宣言した。
「海外に飛ばしていくから。」
「ねぇ、伊吹、どうするつもりなの? 」
結衣菜が焦りながら聞いた。
その結衣菜の顔も、かなり切羽詰まっている。
「これから、兄貴2人も呼ぶ。そのあとにやる事は、さっき俺が説明した通りだ。」
携帯に登録してある響貴兄の番号を出しながら、俺は答えた。
「でもあたし、まだ全然信じられない……。」
「そう。それが普通なんだ。まだ信じられなくて当然だ。」
「だけど、もしそれが本当なら……!!!!!! 」
結衣菜が叫んだ。
俺は頷いた。
「ああ、そうだ。本当なら、一琉は……。」
薄暗く、暗い湿った道だった。
本当に、ここがロサンゼルスだとは思えない。
なんと辛気臭い所だ、と私は思った。
そしてそんな所の隅に聳え立つそんな『研究所』も、決していいものではないという事が分かる。
そして私は、お目当ての研究所を見つけた。
「酷いものね……。」
かけていたサングラスをずらし、私はその建物を見上げた。
すすけて所々ヒビ割れている、コンクリート造りの汚れた3階建ての建物。
こんなまるでお化け屋敷の様な所に、私が捜し求めていた人物がいるとは思えない。
だが私は、その建物の扉を開けた。
ギギーーー……。
鈍い音がし、簡単に扉は開いた。
そして私は、埃塗れの床に足を踏み入れた。
靴音をさせて歩き、後ろを振り向くと、こんなにも綺麗になるのかと思うぐらいくっきりとロングブーツの跡が付いていた。
私はゆっくりと歩いていった。
すると、低い男性の声がした。
「What? who are you? (何? 貴方は誰ですか? )」
その問いに、私はサングラスと帽子を外し、答えた。
「Oh、I’m sorry. My name is Ichiru Minatsuki.Nice to meet you. (あら、すみません。初めまして。私の名前は水槻一琉です。)」
「Oh、are you Ms.Minatsuki? I’m sorry too.And nice to meet you too.Welcome to LA.(おお、貴方が水槻さんですか? こちらこそすみません。それと、初めまして。ようこそロサンゼルスへ。)」
その答えに、私は笑った。
「もう英語で話さなくて結構です。」
すると相手も笑った。
だが、その相手の顔の殆どは、部屋が薄暗いせいで見えない。
「貴方が日本人だという事は、分かっていますから。」
私は言った。
「ほう……。よく分かっていらっしゃる。」
その言葉は、明らかに日本人のものだった。