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Re: 僕の涙腺を刺激するもの   ( No.361 )
日時: 2010/12/24 17:32
名前: 風菜 ◆feeLWMpK0E (ID: mOKQW.49)

第33章 「仮面の下」




「まず貴方は、あの頃、死んでいなかった。現に今、貴方はここにいる。そして、妻が死んだのも、貴方の計算だった。それは、我が子を追い詰める事が目的だったから。」

私は淡々とした口調で言った。

「妻の死、我が子の頭脳、そして自分が死んだと見せかける事、全てが貴方の計算だった。皮肉な事に、我が子の頭脳は、貴方から受け継いだ物だったから。」

そう言っている傍から、私は顔を歪めていた。


「そして、そこまで計算して手に入れたかった物……。それは……。」


















乾いたような空気が、痛く感じる。
経った今、全てを説明した。
皆には、重かったようだ。だが、それも無理ない。

「嘘だろ……!? 本当なのか? それ……。」
顔色を変えて響貴兄が言った。

「ああ。」
俺は頷いた。

「本当だ。」
俺は言った。

結衣菜が泣き始めた。
父さんが呆然とし、上空を眺めた。
響貴兄の顔が、どんどん青ざめていった。
吹雪兄は、頭を抱え、顔をうずめた。

「俺達は今まで……、何を見てきたんだ……。」
細い声で吹雪兄が呟いた。

「誰にだって責める必要ない。それに、今は一琉を助ける事だけを考えよう。」

そう言ったが、機内の空気は、乾いたままだ。


























相手は大袈裟なほどに手を叩いた。

「素晴らしい、ご名答だ。流石とでも言うべきかな。」
「結構です。」

私はすぐさま答えた。

「では君が全てを知ってしまった所で……。」
相手は一歩ずつ前に進みながら、言った。

「君には死んでもらおうか。知ってしまっては、邪魔になるんでね。」

相手の手には、底光りしたような突起物が握られていた。
ナイフだ。

あれで、私を殺すつもりか。


相手が走って来た。
そして、私の下腹に向かって、ナイフを突き刺そうとした。

だが……。





















ギュッ。

「!? 」
相手が私の下腹にナイフを刺そうとする直前似、私はナイフの刃の部分を掴んだ。
鈍い音がし、私の手から少しの血が流れた。

「生憎、反射神経はいい方でね。つい最近も、愚かな女子の平手打ちをかわしたばかりですから。」

相手は驚いて、かなりの狼狽を見せている。

「それとも……。」

そう言いかけた時だった。








ドカーーーーン!!!!!









相手のうしろ、つまり相手がさっきまでいた場所から、物凄い大きな破壊音がした。

そう、爆発だ。





「そんな大層な『計画』を立てておきながら、幼い頃から私を見てきた癖に、私の持つ反射神経にも気付きませんでしたか? それとも、貴方は『アルコール中毒』と、『覚醒剤中毒』である父親を演じるのに、気を取られていたからですか? 」

今度は、私が笑った。
相手を軽蔑する笑いだ。
いや、この人は、本来ならば『相手』と呼ぶべき者ではない。
だが、どうしても私はその呼び名を言いたくなかった。
愛する母を殺した、憎きこの男。
だが、まだ純粋な、無邪気に笑っていたあの頃は、こう呼んでいたのだ。

「だから貴方は、私が爆弾を仕掛けて、貴方を殺そうとしている事、そして貴方が死んだあと、私自身もこの爆破により自ら命を絶とうとしている事に気付かないのですね? 」

























『お父さん』と。












「だから貴方は、いつまでも愚かな人間なんですよ。」

続けてそう言う私の顔は、きっとさぞかし冷徹だったのだろう。

天才面する父親の目の焦点が、合っていなかった。