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- Re: 僕の涙腺を刺激するもの ( No.365 )
- 日時: 2010/12/28 11:17
- 名前: 風菜 ◆feeLWMpK0E (ID: mOKQW.49)
第34章 「感情」
「泉様!!!!! 大変です!!!!! 」
ジェット機の操縦者が慌てて叫んだ。
「どうしたんですか!!? 何か問題でも……。」
「エンジンが切れ掛かって来ています!!!!! 現時点で今はロサンゼルスの上空内に居りますが、このまま飛び続ければ、正規の着地場所に着かなくなってしまいます!!!!! もし不安定な着地となれば、ジェット機の破損と、御自分の安心が完全に保障出来なくなってしまいます!!!! 」
俺の言葉を遮って、操縦者が叫んだ。
機内の乾いた空気が、一瞬にして張り詰めた。
「そんな……。俺達、ここで死んじまうのか!!!!?? 」
「兄貴、物騒なこと言うなって!!!! 」
兄、響貴の言葉に、俺はかなり動揺して言った。
「何とか助かる方法はないんですか!!? 」
吹雪兄が血相を変えて、操縦者に聞いた。
「それが……。もう、絶望的かと……。」
「そんな……。」
歯切れの悪い、そしてなおかつ暗い返事に、吹雪兄も声を落とした。
「どうすればいいんだ……!? 」
髪をグシャグシャにして、父さんが言った。
俺も頭を抱え始めたその時だった。
「大丈夫だよ。」
「!? 」
驚いて振り返ると、結衣菜が笑っていた。
「結衣菜……? 」
「伊吹と、それに柾彦さん、あと響貴さんと吹雪さんも、話を聞いてくれるでしょうか? 」
結衣菜の声に、指定された俺達4人は、曖昧に頷いた。
「私ね、今まで一琉を苦しめてきた張本人が一琉の実の父親だったなんて、伊吹から聞いた時、物凄い驚いた。」
話し出した結衣菜の手は、少し震えていた。
「それと同時に、小さい頃から一緒にいて、凄い仲良かったのに、一琉の苦しみに気付いてあげられなかった自分に、腹が立った。」
その時、俺は思い出した。
公園で結衣菜が一琉の事を話してくれた時の、結衣菜の涙。
あの時、結衣菜は、一琉の為に泣いていた。
「それに何より……。」
徐々に結衣菜の目が潤んでいった。
「あの子は……、一琉は、伊吹の記憶を戻す為に。零の意識が戻るようにって、一琉は、その為にあの父親に着いていったんでしょ? 」
「……っ!!!! 」
俺は涙をこぼした。
ついさっき、皆にこうして説明したのに。
結衣菜の様に、一琉が何故ここまでするのかを、説明した筈なのに……。
何故こんなに、涙が出てくるんだ —————……?
「ここまで一琉がやるのも、全部私達の為。そうでしょ? 伊吹」
「ああ……。」
滲んだような声で、俺は答えた。
「そんなに他人を思いやれる優しい子が、自分から命を絶つだなんて、馬鹿らしいと思わない? あんなに愚かな父親を殺す為に、自分までも死ぬんだよ? 」
結衣菜は決意したように言った。
「そんなの、仲間として、私が許さない!!!!! 」
俺も頷いた。
「それに……。一琉に出会う為に、私達が生まれて来たんだって思ったら、一琉を助ける事なんて、容易いでしょう? 今まであんなに辛い思いをしてきたんだから、今度こそ幸せにならないといけないの、一琉は。それはきっと、神様も味方してくれる。」
大きく息を吸って、結衣菜は言った。
「強く願えば願うほど、私達死ぬなんて運命にはならない。ううん。死ねない。だから大丈夫!!!! 」
「ああ……。そうだな!!!! 」
俺はにっこりと笑った。
そして、父さんと兄2人も、頷いた。
ちょうどその時だった。
「落下します!!!! お気をつけください!!!! 」
操縦者が叫んだ。
その途端、激しく落下するような音と感覚が機内にいる全員を襲った。
全員が叫び、まるで地獄のようだった。
だが、俺と結衣菜、そして父さんと兄貴2人の4人は、共通してこう思っていただろう。
(絶対に、死ぬ事はない —————!!!!!!! )
そして俺は、頭に一琉の顔を思い浮かべた。
一琉 —————!!!!!
俺は……。
お前を残して死んだりなんかしねぇからな —————……!!!!!
そしてジェット機が落下した。