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Re: 僕の涙腺を刺激するもの   ( No.383 )
日時: 2010/12/30 17:39
名前: 風菜 ◆feeLWMpK0E (ID: 6sQlqYA7)

第36章 「死という名の、制裁を」





「何故……。そこまで……。」
脱力する父親を前に、私は続けた。

「皮肉な事に、伊吹の『予測する力』は、母である杏香さんから受け継いだ物でした。その証拠に、杏香さんは、流行のトレンドなどを予測し、有名なデザイナーになりましたから。それを知った貴方は……。杏香さんの脳を取る為に、殺しました。ですがその前に、杏香さんは気付いていました。伊吹がこうなってしまったのは、私(一琉)のせいではない、誰かが仕組んでやった事なのだと。」

私は右手からスイッチを出した。

「私や伊吹、結衣菜や零だけではない。伊吹に家族も苦しめて、杏香さんをも殺してしまった。そして、私の母親も……。」

私はスイッチを押した。

その途端に、父親の右側の壁が爆発した。

「そんな貴方に、死という名の制裁を!!!!! ここで朽ち果てて死ぬという運命から、貴方は逃れられない!!!!! 」

叫ぶ私をよそに、父親は逃げ出した。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! 」
そう叫びながら。

だが、父親の走りはいきなり停止し、体が床に倒れていった。

気絶したのだ。


元々、こうするつもりだった。
爆弾に、気絶する薬を仕込んでおいたのだ。

父親には、今まで自分がした事を忘れさせない。
私流の復讐だ。

私はもう1度、スイッチを押した。

ドカーーーーン!!!!!

私のすぐ傍が爆発した。

予め用意しておいたマスクを、私は装着した。

気絶して、この炎に包まれそうになる廃墟で死ぬのは嫌だった。

きちんと意志のある状態で死んでいきたかった。




私は、もう、伊吹に会う資格などない —————。

そう思っていた。

伊吹が記憶をなくしたのも、零が植物人間になってしまったのも、結衣菜が深く傷ついたのも、伊吹の家族が傷ついたのも、杏香さんが殺されたのも、お母さんが死んじゃったのも —————。

全て私が生まれてきたのが元凶なのだ。

私が生まれてこなければ、愚かな父親がこんな計画を立てる事はなかったのだ。

全部私が悪い —————。

お母さん、今、会いに行くから、待っててね。


















涙を流して、炎に飛び込もうとした瞬間 —————……。



























「一琉ーーーーーーーーー!!!!!! 」

聞き覚えのある声がした。

「!? 」
驚いて外を見た。するとそこには……、

























「伊吹……? 」



















私の大好きな伊吹が、傷だらけになって、そこにいた。






















「一琉ーーーーーー!!!! 」
「「一琉ちゃんーーーーーーー!!!!! 」」
「一琉ちゃーーーーーーん!!!!! 」





















伊吹だけじゃない。






結衣菜。
響貴さんと吹雪さん。
それに、柾彦さん。





皆、傷だらけだった。




















「迎えに来た!!!!! 死んだら、俺達が許さねえからな!!!!!! 」


そう叫ぶ伊吹。






私の目からは、絶え間なく涙が出てきた。
























だけど……。

















来ちゃダメ。


助けちゃダメ。




















きっとまだ君は……。




















思い出してないから。





















私達が出会う、もっと前の日。





















あの日の事を……。