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Re: 僕の涙腺を刺激するもの   ( No.408 )
日時: 2011/01/11 10:35
名前: 風菜 ◆feeLWMpK0E (ID: KjZyd1Q/)

建物全体が暑くなったこの状況で、一琉を助けるのは無に等しいのではないかと、世間一般では思われる。
だが、そんな事はどうでもいい。
世間体なんか、今気にしてはいられない。

俺は息を荒くしながら先へと進んでいった。

「一琉……、何処にいるんだ…? 」
俺の足取りはだんだんと不安定になって来た。
体力的に、限界が近付いているのだ。
だが、メンタル面では、全く持って衰えてはいない。
むしろ、燃え上がって来ているくらいだ。

その時、足が痙攣しだした。
そして、足がもつれ、思い切り倒れた。

「うわっっ!!? 」
俺は体を床に強打し、思わず叫んでしまった。

「いってぇ……。」
俺は震える足を押さえた。

(そろそろ体がヤベェな……。)
顔をしかめながら、俺は立ち上がろうとした。
その時だった。





「伊吹っ!!? 伊吹でしょ!!? 」
俺がよく知っている声がした。

「一琉!!? そこにいるのか!!? 」
俺は叫んだ。

「今い……。」
そう言いかけて、俺は立ちすくんだ。

「ちょっとヤベェな……、俺……。」
自分が情けなくなった。

一琉の場所は分かっている。
一琉の声だって聞こえる。

なのに……。






















自分の足が動かない —————……。





















「伊吹……、ごめんね……。」
遠くで一琉の声がした。
涙で声が滲んでいた。

「今、伊吹の足、動かないんでしょ……? 」
弱っていく一琉の声。

「なのに私……。」
一琉の声の滲みが増した。






























「『助けて』って……。思ってるんだ……。」








「!? 」











そこで俺は思い出した。

一琉が今まで物凄く苦しくて、悲しい思いをしていた事。
何度も泣いていた事。
いつも自分より俺達の気持ちを考えていた事。

今だって、そうだ。
あいつは、もう俺の傍にいる資格がないって言って、ここで命を絶つ事を選んだ。

ここで、やっとあいつは、初めて自分の意志を伝えたんだ。

『助けて』って……。

自分が自分の為に生きようとしているんだ。






























じゃあここで、俺が助けなければどうする?
誰があいつの意志をくみとってやるんだ?



















俺がやらなくてどうする?




















「今行く!!!!! 一琉、待ってろよ!!!!!!!!!! 」
俺はそう叫び、たどたどしい足取りで一琉の声がした方向へと向かっていった。



















今、行くから。
今、助けるから。
今、



















伝えるから。
























「一琉っっ!!!!! 」

一琉のいる場所に、俺は辿り着いた。
そこにいたのは、目に涙を溜めた一琉だった。

「伊吹……。」

俺は馬鹿なくらいに遅い足取りで、一琉のもとへと走り、一琉の腕を掴んだ。