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- Re: 僕の涙腺を刺激するもの ( No.411 )
- 日時: 2011/01/11 13:32
- 名前: 風菜 ◆feeLWMpK0E (ID: KjZyd1Q/)
俺は一琉の腕を引き寄せ、一琉の細い体を抱きしめた。
「伊吹……。」
小さく俺の名前を呼ぶ一琉が、俺の腕の中にいた。
「ごめん。」
俺はそう一言呟いた。
「え……? 」
「ごめん、俺、お前の苦しみに気付いてやれなかった。お前の悲しみに、気付いてやれなかった。本当に、ごめんな……。」
「伊吹……? 」
聞き返す一琉に、俺は言った。
「お前はいつも、俺や結衣菜、そして零の事を考えてくれていた。自分は後回しで。いつも俺等を気遣ってくれていた。俺は、そんなお前の優しさに、惚れたんだ。」
「え……っ? 」
戸惑う一琉に、俺は言った。
「俺、お前が好きだ。俺と、一緒に生きてください。」
その時、俺の肩に一粒の涙が落ちた。
一琉が泣いていた。
「私も、伊吹が好き……。」
そう呟いて、一琉は大きな声で泣いた。
俺はそんな一琉の頭を優しく撫でた。
「一琉!!! 伊吹!!! 大丈夫!!? 」
炎の間を抜けながら元の場所に戻ると、そこにはたくさんの消防車や警察の大群。
そしてその前に立つ結衣菜、父さん、響貴兄、吹雪兄は俺達を心配した。
「うん、大丈夫。」
そう答える一琉。
すると一琉の傍に結衣菜が駆け寄り、結衣菜が抱きついた。
「結衣……。」
「生きてくれてて良かった……。」
それだけ言うと、結衣菜は泣いた。
「伊吹、さっき消防呼んだら警察まで来ちゃったから、ちょっと大事になりそうだ。いいか? 」
そう伝える父さんの顔は、まだ俺等を心配してくれていた。
「ああ、大丈夫だ。心配かけてごめん。」
俺がそう謝ると、父さんは俺の頭をグシャグシャに撫でた。
「と、父さん……っ!!? 」
「本当に心配したんだからな!!!!! 父さんも、兄貴達も!!!! 」
俺は兄貴達の方を見た。
そこには、優しそうに微笑む吹雪兄と、涙ぐむ響兄がいた。
「あ、兄貴達も、本当、ごめ……。」
「うるせぇっっ!!!!! もっと泣いちまうじゃねーか!!!!! 」
そう叫んで、響兄は泣き出した。
「何はともあれ、無事でよかった。お帰り、伊吹。」
そう言って吹雪兄はまた微笑んだ。
「それでな、伊吹……。」
ひとつ咳き込みながら、父さんが切り出した。
「この廃墟には地下があって、そこに母さんが放棄されてたらしいんだが……。」
その時、俺の胸が痛んだ。
そうか、母さんはあいつに殺されてしまったんだ。
「頭に叩かれたような跡があったというのだが、おそらく撲殺しようとしたのだろう。」
「撲殺……。」
俺は呟いた。
一琉の母さんの死因と同じだ。
後ろで、一琉が顔を伏せているのが分かった。
「だが叩かれた時、母さんは死んでいたのではなく、気絶していただけらしい。そしてそのまま放棄されていたから、母さんはまだ生きているんだ!!!!!!! 」
父さんの歓喜の声が響く。
「嘘……。」
後ろで、一琉の涙交じりの声が聞こえた。
「マジか……。」
そこで俺は小さく呟き、口元を押さえた。
ちょうどその時だった。
結衣菜の携帯が鳴った。
「はいっ、もしもし? あっ、お久しぶりです。どうかされたんで……。えっ? 本当ですか? 」
そう言っている結衣菜の目は、また涙が溢れてきている。
「おい、結衣菜、一体どうし……」
「零の伯母さんからかかってきた。零の意識が戻ったって……。」
「えっ? 」
結衣菜は涙で滲んだ顔を更に滲ませた。
「ちゃんと話せる状態で、今、『結衣菜と一琉と伊吹はどこだ? 』って言ってるらしくて……。」
そして、結衣菜はついに泣き崩れた。
俺と一琉も、ついに泣いた。
やっと、全ての苦しみから解放された。
やっと、全ての悲しみを取り除く事が出来た。
これで、やっと幸せになれるんだ。
一琉と一緒に、俺は生きていくと言った。
俺は、生涯一琉意外好きになる奴なんて出てこねえし、いねえと思う。
だから俺は、一生の全てをこいつに捧ぐ —————……。
そう思っていたのだが —————……。