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Re:僕の涙腺を刺激するもの ( No.6 )
日時: 2010/10/17 14:36
名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)

第1章 「無と笑み」


表情がない。

それはいつものこと。僕を気にする人など、到底いやしない。別に、少しはかまって欲しいだなんて思わないし、どうでもいい。





————— 僕は、何もない。

「絶望感に襲われ、そして彼は片時も無く消え失せる。」
「!? 」

僕は、驚いて辺りを見渡した。

「この星に居たのは彼だけだ。」
後ろを振り向いた。




———— 一人の、銀髪の少女が立っていた。

「命無き人間の亡霊は、やがて怨霊と変し全てを焼き尽くす。」

銀髪の少女は喋り続ける。




その少女は、いつの間にか僕の目の前にまで来ていた。


「尚の事、それも彼の夢なのかもしれない。」

そこまで言うと、銀髪の少女は意味有り気に笑みを零した。

「……でしょ? ソレの内容。」

少女の指は、僕が持っていた小説を指差していた。

「……良く分かるね。」

僕は言った。
「この小説を知っている人なんて居たんだ。」

少女の笑みが濃くなる。

「好きだから。その小説。」

透き通った、濁りの無い声だった。




「……君、誰? 」

何の躊躇いも無く僕は聞いた。









————— 窓から光が差し込む。
————— 少女の銀髪が煌めく。





「水槻一琉。君のクラスの転入生よ。」





少女の笑みが、微笑みに変わる。





ふと、埃の匂いがした。
ああ、そうだ、ここは旧校舎の図書室だ。



人工的なものではない、星の様な少女の銀髪を眺めながら、僕はかろうじてそう考えていた。