コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕の涙腺を刺激するもの ( No.70 )
- 日時: 2010/10/17 15:51
- 名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)
第6章 「泉家」
「ただいま……。」
暗いトーンの声を出して、僕はリビングのドアを開けた。
「あら伊吹! お帰りなさい! 」
母がハスキーな声を僕に向けた。
「おお伊吹、お帰り! 」
父が振り返って笑いかけた。
「お帰り伊吹〜。」
「久しぶりだな! 」
兄二人が何ともなさそうに言った。
——— 母、泉杏香(いずみきょうか)は、海外にも自身の会社を設立した、有名ファッションデザイナー。
——— 父、泉柾彦(いずみまさひこ)は、数々の有名人を仕立て上げてきた、芸能界では名前を知らない人はいない、有名スタイリスト。
——— 双子の兄、泉響貴(いずみひびき(兄))、そして泉吹雪(いずみふぶき(弟))は、今人気急上昇中の二人組アイドル、「TWINS」。
皆忙しくて、普段あまり家に帰ってこないが、何故だか今日は全員揃っていた。
でもまあ、こんな家系だから、ルックスについては何も心配しなくていい訳だ。
「父さん、ちょっと頼みたい事があるんだけど。いい? 」
「何だ? 伊吹が頼み事なんて珍しいな。」
「ああ、あと兄貴達も、ちょっといいかな。」
「うん。いいけど……。」
「珍しいな。伊吹がそんな事言うなんて。」
「何々〜? 母さんも混ぜてよ〜。」
僕はため息をついた。
「じゃあいいよ……。母さんも。」
実験の下準備も、大掛かりになると面倒だ。
「じゃあ二階の方の……、カットルームに行こうか。頼み事の内容はそこで説明するから。」
カットルームとは、美容室のような部屋で、主に髪をカットしたりセットする為にあるのだが、結構広い部屋で、服もアクセもたくさんあり、メイクも出来る。両親の仕事柄、そのような部屋が昔から用意されていた。
よく兄二人が両親に服をコーディネートされたりして利用していたが、僕はいくらその兄二人に勧められても、カットルームに入らなかった。
何故かと言うと、両親二人、つまりプロの手に綺麗に整えられたくなかったからだ。だから僕は、髪を切る時も、普通に美容室に行ったし、服も自分で選んだ。
「おい伊吹! カットルームって……! お前一体何するつもりだよ!? 俺等が散々行けって言っても行かなかっただろ!? 」
兄響貴の言葉に、僕は笑った。
「じきに分かるよ。」