コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Because you were「貴方がいたから」 ( No.119 )
日時: 2010/08/18 14:18
名前: ハルカ (ID: q9W3Aa/j)

Ⅶ【032】



翌日、あたしは近所の病院へ向かった。行きつけのところだ。



「瀬田川さーん」

名前を呼ばれて、あたしはドアを開く。

そこにはあたしの知っている先生ではなかった。

「澪さんやね?担当代理の“押村ダイ”や。よろしくね」

「よろしくお願いします・・・」

代理?ってことは、藤田さん(担当医)は風邪でも引いたのかな?

というか・・・、押村って・・・どっかで。しかも、方言?

すると、突然ドアが開いて、見覚えのある人が出てきた。

「親父!!薬の並び替え終わったで!」

「時雨君!?」

「ぉわっ!・・・澪やんか!!」

やっぱり・・、どっかで聞いたと思ったよ。

あたしたちの反応を見て、押村先生は不思議そうに尋ねる。

「時雨・・・、知り合いなんか?」

「おぉ、昨日知りあってん」

言い終わったあと、あたしの肩に手を置き笑顔で尋ねてきた。

「どないしたん?風邪?」

——ビクッ 一瞬動揺して、体が震えたのが分かった。

その震えに気付いたのか、笑顔だった顔を真剣な表情に変える。

あたしは答えることが出来ずにただ俯くだけ。

しばらくの沈黙の後、時雨君は今度、押村先生に聞く。

「親父、澪の病気なんなん?知ってんのやろ?」

あたしはその言葉でハッと前を向く。そして・・・

「遺伝病・・・。 余命はあと1年くらいや」

「は・・・?一年やて?」

言ってしまった・・・。あたしは上げた顔を再び下に向ける。

重い沈黙が流れたのは話すまでもない・・・。




—————————


帰り道、時雨君に「送っていく」と言われて断ったけど結局押し切られてしまった。

「・・・なんかゴメンネ。会って二日目なのに・・・こんな重い話」

あたしは力なくあははと笑う。

時雨君はあたしを見つめる。悲しそうな目をして。

「ツラないん?」

「・・・・ツラいかな」

というか、正直言ってわからない。

生きたいって思ってるよ。死にたくないって思ってるよ。

だけど、ツラいかは分からない。

風になびかれた髪を手で元に戻しながらあたしは口を開く。

「後悔することがなかったら・・・別にあたしは大丈夫」

時雨君はその言葉を聞いて立ち止まる。あたしもつられて足を止める。

「時雨君・・・?」

「・・・・かよ」

え?聞き取れなかった。 あたしは首を傾げる。





一回きり