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Re: Because you were「貴方がいたから」 ( No.160 )
日時: 2010/11/14 11:24
名前: ハルカ (ID: noCtoyMf)


Ⅶ【037】





意識を失ってから酷く残る私を呼ぶ声・・・

・・・・三鷹?




———瞳を開けると、そこには

「澪っ!!?」

切羽詰った声で私を呼ぶ、時雨君だった。

「・・・・時雨、くん?」

ぼやけた瞳には、はっきりと時雨君の姿が映らない。

ただ、声だけがあたしの耳に届く。

首を時雨君の方に向けると、体がグイッと上に上がった。

それと同時に、時雨君の匂いがあたしを包む。

「・・・・時雨君?」

頭がぼんやりしていて、今の状況がよくわからない。

思考が回らない・・・・。

だけど、抱きしめられた腕からひしひしと伝わる。

まるで“よかった”といいたげに。

時雨君の腕はかすかに震えていた。

力強く抱き締めてくれているのに、どこか優しく、・・・あたしを包み込む

この感じ・・・・誰かに似てる・・・・

けど、思考の回らないあたしの頭はそんなこと思い出せない。

ただ感じるのは、“抱き締めていて”と・・・・

心の中で願うあたし。

あたしは同じように、力強く時雨君を抱き締めた。



しばらく抱き締めあったあと、ふと顔の近くに吐息がかかった。

見上げると、今度ははっきりと時雨君の姿が瞳に映った。

目元を染めながら、あたしを射抜くような瞳を向ける。

「・・・・しぐ、」

先は唇を塞がれてしまって何も言えなかった。

射抜くような瞳は閉じられていて、

今はただ焦りを感じるような口付けをしてくる時雨君。

あたしの思考はゆっくりと、けど確実に早く動き始めた。

「時雨君っ!!」

あたしは時雨君を突き放した。

あたしは呼吸を整えながら立ち上がる。

「・・・・・あたし、帰るね」

沈黙が苦しくて、けど何を言ったらいいかわからないあたしは

静かに時雨君の家を後にした・・・・・。