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　あたしの話をしてみようと思います。
あたしは学校の成績はいつも平均点くらいを彷徨っていて、運動は得意でもなければ別段不得意なわけでもありません。
ブス！　と虐められたことはありませんが、可愛いね、とよく言われるわけではありません。心の中では皆、あたしのこと可愛くない顔って思ってるんだと思います。
　あたしはあまり目立ちません。
教室に居ても、友達と居ても、部活でラケットを握っていても。居場所が感じ取れないのです。
あたしはバドミントン部に所属していますが、部長や副部長という肩書きも持って無いし、県大会に行けるほど強いわけでもありません。

　あたしは人を嫌いになることがあまりありませんでした。
友達なんかは、誰々ちゃんがむかつくだの誰々ちゃんキモイだの悪口をたくさん言いますが、あたしはよく分かりません。自分の中では長所だと思ってます。

　そんなあたしにも嫌いな女の子が一人います。
クラスでもかなり人気がある、前野さんです。彼女は地毛である茶色い髪をいつもポニーテールにしてて、歩くたびにそれが揺れててとても可愛いです。
顔立ちもはっきりしていて、大きな目はお人形さんみたい。肌も陶器みたいにつやつやしています。
当然、男の子からも女の子からも人気があります。だけど前野さんはそれを鼻にかけることはせず、誰にでも優しいです。みんなきっと、前野さんが大好きです。

　あたしが前野さんのことが嫌いな理由は簡単です。
あたしには大好きな男の子が居ました。その子はあたしにも話しかけてくれる、凄く優しい男の子。笑顔が素敵で、爽やかでした。
だけどその子に告白なんて出来るはずありません。だってあたしは自分に自信がないから。
そんなことしているうちに、その男の子が前野さんに告白をしたという事実が耳に入ってきました。

　涙なんて零れてきませんでした。だってあたしのことなんて、彼が好きになってくれるはずは無いのです。前野さんは彼の告白を断ったということらしいですが、あたしは前野さんに嫉妬しました。
——どうして彼は前野さんを見て、あたしを見てくれないんだろう。
人生初めての嫉妬。その相手は可愛くて優しくて、みんなの人気者。
それがきっかけであたしは前野さんのことを、好意的な目で見ることが難しくなりました。いつもいつも彼女の粗探しをしている気がする。あたしは前野さんが何かに失敗することを待ちわびている。そう、あたしは最低なのです。
そんなことに気付かず、前野さんはあたしに凄く優しく接してくれます。何の落ち度もない素晴らしすぎる女の子。
あたしは前野さんが、少しでも欠点があったら彼女のことを嫌いにならなかったかもしれません。
例えば頭が悪かったり、少し太っていたり。性格に難があったり。そんなこと。

　ああ、と青い空を見上げて思います。
あたしは前野さんになりたいんだな、と。単純な嫉妬。恋愛面だけではなく、全てにおいて彼女に嫉妬しているのです。
あたしは溜息をつきました。あたしは前野さんになんてなれないというのに。

（前野さんとあたしと嫉妬）