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- Re: おてんばアリスの策略!夏休み ( No.64 )
- 日時: 2010/06/26 22:58
- 名前: はるた ◆On3a/2Di9o (ID: V32VFdCN)
永遠の愛なんて信じて無いわ。だって人間はいつか死んでしまうでしょ? 死んでも愛してるだなんて、そんな根拠どこにも無いのよ。仮に来世があったとしてもね、人間は前世のことなんて何一つ覚えてやしないのよ。その証拠に、前世で愛していた人を思い出せって言っても何も思い出せないでしょ? いくら愛して愛して愛しつくしても人間は死んだら、その温もりも声も容姿も思い出も何もかも忘れてしまうのよ。寂しい? そんなものよ、何でもかんでも都合よくは出来て無いわ。
え? 天国や地獄? 馬鹿ね、そんなものあるわけないじゃない。もし天国があるんだとしたら、あたしは今すぐ自殺して行くわよ。だって天国は凄く素敵で嫌なことなんて一つも無いんでしょ? もし本当にあったって誰かが証明したら自殺者が増加する一方ね。
え? 地獄かもしれないじゃないかって? 何でよ。あたしは悪いことなんて何一つしてないわよ。あー、でも小さい時、あたし蟻と蝉と天道虫踏み潰して殺しちゃったことあるのよね。あ、故意で。今思えば最低ね、あたし。やっぱり地獄行きかしらね。でもそんなこと言ったら、天国に行けるのって一体何人になるのかしら。ていうか、天国に行っても愛し合おうねなんてそんな宗教的な考えあたしは持ち合わせてないのよね、残念ながら。
*
彼女の白いワンピースが、黒の家具を基調とした部屋の中でやけに目立っていた。自分の部屋だというのに、彼女がいるというだけでやけに落ち着かない。誰か知らない人の部屋にいるみたいだ。
彼女の血色の良い唇から淡々と、言葉が紡がれていく。彼女は自論を言い終えると「お腹空いちゃった。冷蔵庫の中にある物で何か作っていいかしら」と俺のほうを見て尋ねる。ご自由にどうぞ、と言うと見た目だけは天使のような彼女の百二十パーセントの笑顔を見ることが出来た。そして彼女はワンピースの裾を挑発するように翻し、部屋を出て行く。
——永遠の愛なんて信じて無いわ。
まさか付き合っている彼女からそんなことを言われるとは思わなかった。思わず「え?」と聞き返してしまった程だ。
本当に彼女は綺麗だ。顔立ちも雰囲気も選ぶ言葉も全て。そんな彼女と付き合い始めたきっかけは、全く覚えていない。きっとそれは彼女も同じだと思う。
彼女の話し方は独特で、とても人を引き付ける。彼女の話には耳と目と神経と頭、全てを傾けてしまう。
——死んでも愛してるだなんて、そんな根拠どこにも無いのよ。
彼女は笑顔で、とても否定的な言葉ばかり吐く。だけどそれは全て正論ばかりだ。ソファーに腰掛け、目を伏せながらそう語る彼女は幼い頃に絵本で読んだお姫様みたいだった。……お姫様と違うのは、お姫様は綺麗事を聞いているこっちが恥ずかしくなるくらい言うが、彼女は綺麗事に否定的なところだ。
「ホットケーキやいたけど、食べる?」
気づいたら彼女が部屋に戻ってきていて、ソファーに寝転ぶ俺の顔を覗き込んでいた。というか、冷蔵庫の中にあるもので作ると言っていたのに何でホットケーキが作れたのだろう。
「ああ、ありがたく頂くよ」
そう言うと、彼女は思いっきり眉を顰め「何かその言い方おじさんみたい」と笑った。
ああ、永遠の愛なんてなくても僕今凄く幸せだ。それだけで、その他のものなんて、何も。
(愛された事実)