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- Re: 憂鬱メアリー | 泡沫サイダー2/3 ( No.113 )
- 日時: 2010/07/08 18:05
- 名前: はるた ◆On3a/2Di9o (ID: L0k8GmDX)
じりじりと照りつける日差しがコンクリートに熱を持たせて、暑くなるのに拍車をかけるのよーとお母さんは今朝言ってた。
確かに外は馬鹿みたいに暑い。木陰に入っても、プール帰りで、髪の毛とかが濡れていたとしても、だ。それに、蝉の泣き声が嫌になるくらい聞こえてきて、そのうるささにイライラもしていた。
夏休みに必ずあるプールの補習授業に、あたしは欠かさず出ていた。小学六年生にもなると、出ない人の方が多いけどまぁ仕方ない。うちには旅行とかの予定も無いし、お母さんとお父さんは「今年で最後なんだから頑張りなさい」って言うし。嫌々出てると言っても過言じゃなかった。
「うーあっ! 暑いー暑いよ、茜ー! 扇子とか団扇とか持ってない? 絶対今Tシャツ絞ったら汗がびちゃーっと出てくるって!」
隣でプールバックを振り回しながら歩く亮太は、大声で文句を言いながらあたしに不満そうな顔を見せた。
亮太とあたしは幼馴染だ。幼馴染というと、少女漫画の影響か知らないけどイコール恋愛と結びつける人が多いけど、あたしは亮太に対して“好き”という感情を抱いたことが無かった。というかよく分からない、好きという感情が。クラスの女子はたまに恋愛話とかで騒いでるけど、あたしはそれを聞いてるだけで自分の話は絶対出来ない。経験なんて無いし。
コンビニや小さな本屋などが立ち並ぶ道を通ると、閑静な住宅街が見えてくる。街路樹とかが立っていて、中々見栄えは綺麗だ。
その住宅街の中に、あたしと亮太の家がある。隣同士で、昔から遊びに行くことが多かった。
「明日のプールも茜は行くんだろ?」
亮太は白い歯を見せながらそう尋ねる。
「勿論」
と返事をすると「俺も」と笑った。つられてあたしも笑う。
透明なビニール素材で出来ているプールバックが馬鹿みたいに照り付ける日差しによって熱を持ち、触れた瞬間思わず「あつっ」と声が漏れる。毎年恒例の、プールの補習授業。
「明日も、絶対来いよ茜」
悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう言う亮太の顔を見て、何かが音を立てて変わっていく気がした。
——来年の夏休みも、そのまた来年も、ずっと一緒にいれたらいいね。
不思議と亮太にそう言いたくなったけど、恥ずかしいからやめておいた。——恋愛感情なんて無いのは分かってるけど、特別な存在になりたいのもまた確かだった。
(暑い夏とプール)