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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 憂鬱メアリー | 絶望コーリング! ( No.116 )
- 日時: 2010/07/09 19:12
- 名前: はるた ◆On3a/2Di9o (ID: L0k8GmDX)
外に出ると空はまだ青くて、ああそういえばまだ十三時過ぎだったっけなと思い出した。
家の前の道路のコンクリートは日の光を吸収して、熱を持っている。そのせいで凄く暑い。汗が流れてくる。
衝動的に家を飛び出し、庭に立ち尽くす。
引っ越したのは小学二年生のとき、何も覚えてない。街の名前も、道も何も知らない。ふう、と溜息が漏れ思わず座り込んだ。俯き、地面を見る。せっかく思い出したのにな。しのくんのこと。
——そのときだった。
「ナナ」
低くて、少しかすれた声が頭上からした。ハッとして顔をあげると——
「……?」
こげ茶色の髪の毛、少しつり気味の目、真っ黒い学ラン。
——脳内で何かがはじけた。チカチカとハイライトを起こして、それで。
「しの、くん?」
自分でも驚くくらい声が掠れていた。目の前に立っている彼はにやりと意地悪そうな笑顔を見せ「ナナ、久しぶり」と言った。
木が風に揺れて、ザァザァと音を立てる。暑い、蝉が馬鹿みたいに鳴いてる。ミーンミーン、ジージーうるさい。
「何で、ど……してあたしのとこに?」
そう聞くとしのくんは目を少し細めて、
「……今日、机の引き出しの中整理してたら、お前と俺の小さい頃の写真が出てきて。それで急に思い出して、母さんに聞いて年賀状の住所を頼りにして、来た」
あたしは何て馬鹿なんだろう。年賀状の住所を頼りにする、という考えがすっぽ抜けていた。
ハハ、と自分に対して笑える。そんなあたしをしのくんは「何だよいきなり」と笑う。
——会いたかった。
その言葉が重なるのは、そう難しいことではなかった。
(泡沫サイダー)3/3
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