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（うさぎな彼女）

　知ってるか？　知らないっておい、まだ話してないだろ何も。聞きたくもないのか？　まぁどうでもいい。俺は勝手に話すからな。
俺は海野さんが好きだ。知ってるよな、お前も。知らなかったって？　じゃあ今知れ。好きなんだ、凄く。見た目も二重丸、いや三重丸だが、性格が良い。しかも名前が海野渚、親のセンスを感じるよな。なんとも涼しげな名前だろうか。そんなこと知らないって？　じゃあ話を戻すよ。性格が良いんだ彼女は。さりげない優しさというか何というか……この前俺日直だっただろ？　そのときも小柄な彼女が歩み寄ってきて『大井君、大変でしょう？　手伝うよ』そう言ってもう花に喩えるのも申し訳ないくらいの素晴らし過ぎる笑みを見せてくれたんだ。……お前気持ち悪いって？　ごめん、少し自覚してた。俺今かなり気持ち悪い。

　まぁそれは置いといて。海野さんは可愛い。大きくて綺麗な色をした瞳、目。眉の少し下あたりで切りそろえられた前髪は、走るたびに少し乱れて凄く可愛さが増すんだ。小柄な彼女は、低身長なのがコンプレックスなのか、いつも少し足を伸ばし気味で歩くんだ。一回聞いたことがあるんだ。「身長低いのがそんなに嫌なのか？」って。そしたら彼女「……身長低くないよあたし！　皆が高いだけ！」と言い返してきたんだ。もうね、俺はにやけるのを抑えるのに苦労したよ。可愛すぎるだろ！　一種の犯罪だよこれは！

　え？　何でそんなに好きなのに想いを伝えないのかって？　女々しいとか言われるかもしれないけど、告白して俺が振られたら、もう海野さんとは以前のように話せなくなる。気まずいよな、お互い。それが嫌なんだよ。海野さんがいない世界なんて今現在考えられない！　彼女は俺の世界のすべてだ！　汚す気はないし、侵す気もない！　……は？　侵すが犯すに聞こえた？　最悪にも程があるだろお前は。俺のことをどれだけ馬鹿にしてるんだ。俺は海野さんを傷つけるやつらは絶対許さない！　どうしてお前はそんな呆れたような顔をしているのか。台詞があまりにもクサすぎて笑う気もしないって？　笑わせる気で言ってない、当たり前だ！

　海野さんの魅力について延々と親友に語り続ける大井奏の背後には、顔を真っ赤に染めた愛しき海野渚の姿があったことは、また別の話。

（うさぎな彼女）