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Re: 憂鬱メアリー |うさぎな彼女 ( No.194 )
日時: 2010/07/15 17:38
名前: はるた ◆On3a/2Di9o (ID: L0k8GmDX)


(先生)

 カツカツ、チョークで文字を書くと乾いた音がする。
「答え合わせするぞー、まず問一から……」
 そう言って先生が黒板に書いてある、数字と文字の羅列を公式に当て嵌めて説明し始める。数学嫌いなあたしにとっては拷問に近い……けど。

 先生の細いけど、割と筋肉質な腕が白いチョークで黒板に文字を書いていく。カツカツ、音が教室に響く。あたしはノートをとることも忘れて、聞きほれる。

 先生に恋するだなんて、少女漫画の中だけのことで実際に起こるなんて有り得ないと思ってた。それも自分の身に起こるとは。誰にも言えないし、言う気も無いけどあたしは先生に恋をしている。数学の先生。若くて、格好良くて優しくて、生徒からの人気も高いんだ。

 先生の少し低めの声が、教科書の文を読み上げる。数字と文字の公式。何だっけ……因数分解? 素因数分解? 二次方程式? 今あたしは何をしているんだっけ。

 叶わない恋だなんて、言われなくたって知ってる。
先生はあたしのことただの生徒としてしか見てないし、見てくれないことも分かってる。それ以上の関係になることは、問題があるんだ色々と。やっぱり少し悲しいけど、とっとと中学校を卒業して先生のこと忘れるのが一番なんだと思う。だけど、
「金井? 大丈夫か?」
 先生があたしのこと、そうやって授業中呼ぶから。
忘れたいのに、忘れようとするたび名前を呼ぶから。あたしはいつまでも、先生のこと好きなままなんだ。

 ねぇ、好きです。大好きです。
気付かなくたっていいから、だから、忘れさせて。

(先生)