コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 憂鬱メアリー |サマーホリデイ ( No.232 )
- 日時: 2010/07/24 17:39
- 名前: 七海 ◆On3a/2Di9o (ID: L0k8GmDX)
その日はたまたま風邪を引いてて、学校のプールを見学した。プールサイドの隅のほうにぽつんと置かれたベンチで、僕は水面をジーッと眺める。隣には、確か五組の平岡さんが座っていた。平岡さんもプールを見学していた、理由は知らないけど。……そういえば平岡さんはずっとプールを見学してるんじゃないか? 僕は今回が初めてだけど、いつもプールの中から見学の人たちの座るベンチの方を見ると、平岡さんが必ず居る気がする。何でだろう、どうしてだろう。僕は“好奇心”ってやつに勝てなくなり、本人に聞いてみた。
「平岡さん」
そう呼ぶと、平岡さんは僕の顔を見て女の子にしては低い声で「何?」と言った。
「どうして平岡さんはいつもプールを見学してるの?」
そう訊ねると平岡さんは「何だこいつ」って言ってるような目で僕を見て、ふうとひとつ溜息をついた。その仕草は僕と同じ小学五年生だっていうのに、大人びて見えた。
「あたしね、塩素アレルギーなのよ」
塩素アレルギー? 聞いた事ない言葉に、思わず首を傾げる。平岡さんはまた溜息をついて、
「プールの中にはね、塩素っていうのが入ってるんだって。それのアレルギーなんだってあたし」
クールに淡々と平岡さんは呟く。その視線の先にはプールがあって、皆がばしゃばしゃと音を立てて泳ぐから水面が揺れてた。
「じゃあ平岡さんはプールに入ったことないの?」
そう訊くとゆっくりと頷いた。真っ白な足をゆらゆらと動かし「妹がね」とゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「妹は塩素アレルギーなんて持ってないわけ。あたしだけなの。だから水着の形に日焼けなんてしちゃって、それを見せ付けるのよねあたしに。んで『お姉ちゃんはいいよね、こんな日焼けしなくてすむんだから』って。何か……嫌な気持ちになるのあたし。別にプールは好きじゃないし、入りたいって思ったこともないんだけど、何かやだ」
平岡さんはいっきに喋ると、はぁと一つ息をついた。平岡さんの日に焼けてない、真っ白な肌が眩しかった。
(塩素アレルギー)
お題提供:金平糖さん「日に焼けてない部分」「スクール水着の形に日焼け」「塩素アレルギー」