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Re: 星空ジャック! | 夢の中の自分 ( No.253 )
日時: 2010/07/24 17:35
名前: 七海 ◆On3a/2Di9o (ID: L0k8GmDX)

 幼馴染と夏休み、自分の部屋で勉強。世間的に言えばこれは恋愛ゲーム的なシチュエーションで、中々憧れられるような展開だったのだが、俺はいっさい萌えとかそんな気分じゃなかった。
「どうしてこんな簡単な問題も一人で解けないの? その頭には脳味噌がつまってるはずよね? もっと脳味噌を動かしたら? その頭あるだけ無駄なんじゃないの」
 幼馴染——葵は俺の間違いだらけのノートを見つめ、淡々と毒を吐いていく。昔からこいつは毒舌で、本人の気付かないうちに人を傷つけていくのだ。それはまるでナイフのように。

 葵は顔は凄く可愛らしくて、それはそれは男からの人気も高い。……皆振られるのが分かっているから、告白なんてしないが。
俺もその中の一人で、葵のことが幼稚園の時から好きだった。昔から思ったことをズバズバと言ってしまう子だったが、それでも葵は俺の中でのお姫様とか妹とかそんな位置づけだったのだ。一度本人に伝えたことがあるが『お姫様だの妹だの勝手に決められて心底腹がたつ。あんた一体、あたしの何気取りなの?』と一蹴されて終わった。

 クーラーのきいた部屋は涼しくて、まるで外とは別世界だ。
「勉強が分からないから教えてくれって頼んでくるから、わざわざ来たくもないあんたの部屋に来てやったんだから、感謝して勉強に励めば? クーラーに当たって涼んでるんじゃないわよ。クーラーに脳味噌凍らされちゃってるんじゃないの? だから馬鹿なままなんじゃない?」
 葵の毒吐きはまだ続く。一言一言に棘が生えてるみたいに、グサッと俺に刺さる。だけど彼女のことを嫌いになんてなれないのだ。だって俺は。

「分かった。次の問題が半分以上合ってたら、凄く良いご褒美あげるから。馬鹿なあんたでも、これなら頑張れるでしょ?」
 こうして彼女が挑発するから、俺はその誘いにのって馬鹿みたいに勉強に励むのだ。出来もしない数学を、とりあえず公式にあてはめて頑張ってみたり。彼女はそんな俺を見て「単純だね、あんた本当に」と笑うのだ。

(毒吐きガール)

お題提供:あさ子さん「鋭利な彼女の言葉」