コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 白雪姫はりんご嫌い ( No.265 )
- 日時: 2010/07/27 14:39
- 名前: 七海 ◆On3a/2Di9o (ID: L0k8GmDX)
いつも通学に使っている道は夕方にもなると夏でもかなり暗く、人通りもかなり少ない。家も数える程度しかなく、しかもいつも明かりが消えている。多分空き家なんだろうな。それから空き地がやけに多い。買い手がつかないのだろうか? 知らないけれど。
そんな気味の悪い道を通っているのは、俺の通っている高校へかなり近道だからだ。そりゃ朝は睡眠時間というものを少しでも増やしたいし、放課後はとっとと家に帰りたいし近い道の方が都合が良い。
だけど、こんなことに遭遇するなんて考えたことも無かった。
五メートルくらい離れた先に真っ黒な髪を胸元あたりまでのばし、真っ黒なセーラー服に身をつつんだ肌の白い美少女が微笑を浮かべて立っている。うわ、靴下とローファーまで真っ黒だと驚いている場合じゃない。
その少女の手にはナイフが握られていた。
暗いこの道でもどこかからの光をうけ、光るナイフの切っ先。少女はそれを俺に向けてニコリと笑う。
「初めまして、あたしはあなたのことを殺しに来ました」
爽やかな声調でそう言うと、いっきに走り出しナイフを俺につきさそうと向かってくる。「うわっ!」間一髪それをよけ、距離を取ると少女は尚も笑いながら美しい顔をこちらへ向ける。
「一目ぼれだって言ったら、信じてくれますか?」
少女はそう言い体制を直してナイフを俺に再度向ける。恐怖よりも疑問が脳内を埋め尽くしていく。一目ぼれ? 意味がわからない。悪いけど、この少女のことを俺は知らないし出会ったことも無い。
「いつもこの道を通るあなたを、あたしはあの空き家からずっと見てたんですよ」
そう言って少女は一軒の空き家を指差す。ボロボロで本当に人が住んでいたのか不思議に思えるほどだ。
「あーあたし好きだなぁと思って、どうやったらこの愛をあなたに伝えられるのかなぁと思って。普通に告白するんじゃきっとあなたはあたしのこと意識してくれないなぁと思って。だから殺そうかなって。殺せば一生一緒にいられるし、他の女も寄り付かないですもんね。だから」
饒舌を振るいながら少女は笑顔を絶やさない。本当、見た目だけは凄く可愛いなとか呑気に考えてる場合じゃないことは痛いほど分かってるのに。
「あたしの、愛の表現の仕方がすこし人とは違ってた、それだけのことです」
そう言いながら少女は俺に向かって走ってくる。自分でもよく分からない声をあげながら避けようとするけど、一瞬遅く。
わき腹に鋭いような、だけどすこし鈍いような痛みを感じる。じわじわ、血が流れ出ていく感触。腹を伝って、下半身へと伸びていく血の筋。
「だーいすき、です本当に」
少女の甘い声を聞きながら、視界がフェードアウトしていって、もう何も分からなくなった。
(私の愛の表現の仕方)
お題提供:るりぃさん「愛ト狂気ノ狭間デ」