コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 白雪姫はりんご嫌い / 短編 ( No.313 )
- 日時: 2010/08/03 12:14
- 名前: 七海 ◆On3a/2Di9o (ID: L0k8GmDX)
誰でも良い、誰かから告白されるのが夢だった。
そりゃあ勿論好きな人からされるのが一番嬉しいのだろうけど、そんな確立は零に等しいから、諦めていたのだ。誰かから告白されるということ。それは自分のことを想っていてくれた人がいるって、実感出来る。私はそう思いながら過ごしていた。
——仲の良い、男友達だった。
佐々木修司とは中学校の頃から一緒で、中学生の頃は思春期の弊害もあり男子の友達を作るという行為が中々出来なかった中、修司とだけは仲良く出来たのだ。一緒に帰るなんてことも、カップルでもなんでも無いのにしたりお互い好きな漫画を貸し合ったりすることもよくしていた。恋愛感情なんて、これっぽっちも抱いたことが無いって言ったら失礼だろうか。
だから、彼に告白されるだなんて思ってもいなかったのだ。
——夏休み、蝉がうるさく鳴いているのが窓の外からよく聞こえてくる部室。私と修司は剣道部に所属していたのだが、今日はミーティングがあるということなので部室に集合となっていた。そして早く着すぎてしまったのだろうか、部室には私と修司しかまだ来ていない。
部室には長机が二つとパイプ椅子が十脚あり、剣道部員は少ないため足りている。窓の外には校庭が見え、あれは野球部だろうか、掛け声をあげながら必死に練習しているさまが見受けられる。
「好きだよ、雛子」
いきなり修司がそんなことを言い出すものだから、私は思いっきり眉を顰めて手に持っていたスクールバックを床に落としてしまった。ボスッという、乾いた音が室内に響き渡る。
「好きだった、ずっと」
冗談やめてよ、嘘でしょ? そう言いたかったのに、修司の目に冗談の色は無くて、私は「ごめんなさい」と呟く。
「修司のこと、友達としか思ったことないの……」
自分でも驚くくらい、細く弱々しい声だった。どうしてだろう、私は誰かに気持ちを伝えてもらうのが夢だったのだ。告白をされたら幸せになれるはずだったのに。どうして今こんなに辛いのだろう?
「……そっか、ごめんな」
修司は今にも崩れそうな笑顔を見せる。そして私は、何故か知らないけどいっきに罪悪感に駆られた。修司は私のことを好きでいてくれたのに、どうしてそれに応えられないの私? 新たに生まれる疑問は、さらに私を追い詰めていく。私は修司のことが好き、それは友情的な意味で。恋をしたとかそういうことは一切無いのだ。だけど、修司とはこれからもずっと一緒にいたい。今までと同じようにずっと一緒にいたい——到底無理なことが脳内をかけめぐっては消えていく。
私は罪悪感に駆られるほど、修司に依存していたのに。恋愛感情を抱くなんて簡単そうなことが出来なかった。
「ごめんね」
再度呟いた謝罪の言葉は、酷く掠れて震えていた。
(愛さなくていいのに)
お題提供:金平糖さん「気持ちも嬉しくない」「依存」