コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 白雪姫はりんご嫌い / 短編 ( No.321 )
- 日時: 2010/08/07 13:41
- 名前: 七海 ◆On3a/2Di9o (ID: zFyt/1.A)
——あたしがもし死んで、それを苦に後追い自殺なんかしたらあんたのことぶっ殺すからね。
彼女はそう笑った。そんな彼女と目を合わせて僕もつられて笑った。凄く幸せだったと思う。あの時は彼女のことを世界で一番大切だと思っていたし、きっと彼女も僕のことを大切だって思ってくれていたと自負している。
——だからまさか彼女の言葉が本物になるなんて、これっぽっちも考えたりなんてしなかったのだ。
*
彼女——和田梓の葬式には、溢れんばかりの人が集まった。皆、喪服や学校の制服などで集まっているため全体的に黒い。当たり前だ、赤い服で葬式に行ったなんていう人を僕は聞いたことが無いし、逆にいたとしたら常識はずれも良いところだと思う。
そんな彼女の葬式が終わって、もう三日が経っていた。
交通事故だった。学校帰り、横断歩道で信号無視した軽トラックに撥ねられたと聞いた。彼女の乗っていた自転車はバラバラになり、もう原型を留めていない位だという。一体どれだけのスピードで撥ねられたんだろう。そう考える程の余裕が、僕には無かった。
——梓が死んだ。
そう、彼女の母から電話が掛かってきても涙は零れなかった。実感が、沸かなかったのだ。昨日まで彼女は僕の隣で笑っていて、僕は彼女に触れる事だって出来た。なのにもう二度と彼女を見ることも、触れることも話すことも何も出来ないなんて。
自分の部屋の電気をつけるのを忘れていて、もう午後七時を過ぎたということもあり、部屋の中は薄暗い。だけど明かりをつける気にはなれず、そのままベッドに倒れこんだ。
「あたしがもし死んで、それを苦に後追い自殺なんかしたらあんたのことぶっ殺すからね」
彼女の言葉を呟くと、虚しさに支配された。今自分はどんな表情をしているのだろう。笑っているのだろうか、泣いているのだろうか……何の表情も、していないのだろうか。僕は溜息をつく。白いシーツは意外にも冷えていて、夏場だということもありひんやりしていて心地良い。
幸せだったはずなのに。僕と彼女は、この間まで一緒に笑い合っていたはずだったのに。どうしてこんなことに。
ぼーっとしているだけで、色々なことが脳内をめぐっては僕自身を責めていく。
「……後追い自殺したら、ぶっ殺すんじゃなくて……」
それ以前に、死なないでくれよ。
そう彼女に対して言いたかったのだ僕は。もうその相手はいないけれど。
そう考えると、やっと涙が出てきた。凄く凄く、苦かった。
(君のいない世界)
BGMはlego big morlの「Ray」って曲で!
凄く良い曲です^q^おすすめ!