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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 白雪姫はりんご嫌い / 短編 ( No.391 )
- 日時: 2011/03/28 16:49
- 名前: 七海 ◆On3a/2Di9o (ID: VmcrDO2v)
好きの二文字が言えなかった。
振られるのが怖くて、それまで普通に話せていた関係が崩れてしまうのが怖くて。
だから中学校を卒業すると同時に告白するつもりだった。
泣いて泣いて、騒いだ卒業式からもう一週間が過ぎようとしている。
あたしはベッドの上に寝転び、天井を見つめていた。壁にかかっている時計の針は、もう午後二時を過ぎていたけど、あたしはまだパジャマ姿だった。
どれくらい好き?と聞かれたら世界で一番好き! と言える。それくらい彼のことが好きだった。
彼と私は同じバドミントン部に所属していて、小学六年から中学二年まで同じクラスだった。異性の友達の中では一番仲が良く、一緒にいて凄く楽だった。音楽とかの趣味も合い、色々なことでたくさん話した。
好きだと気づいたのは中三の春。
クラスが離れてどこかぽっかりと穴が開いたような気がしてはっとする。何でこんなに寂しいんだろう。何でこんなに苦しいのだろう。
廊下ですれ違うたび、目が合う。部活も引退し、クラスも離れているため今までみたいに気軽に話すことが難しくなる。
彼と他の女の子が話している姿を見て、胸がぎゅって掴まれたみたいに痛くなる。
辛い、苦しい。そんな感情に支配されて、あああたしは彼のことが好きだったんだと気付いた。
携帯のメール作成画面を開く。
好き、そう二文字の言葉を打つのは簡単だ。三秒もかからない。
だけど送信ボタンを押すのに勇気が出ない。震える指は、そのボタンを押すのを躊躇ってしまう。
「好き、好き、好き」
呟いて呟いて、気持ちがどんどん大きくなっていく。耐え切れずに涙が零れる。
本当に好きだったの、大好きだったの。
呟いても彼はそこにない。
(空虚な恋心)
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