コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 青春ライン*オリキャラ募集中! ( No.17 )
- 日時: 2010/07/04 07:30
- 名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)
3話
放心状態のまま、俺は葵に引きずられていた。
と、いつの間にかもうすぐ教室。1年1組の表札が見える。
『このまま大人しく連れて行かれるかっつーの…!』
俺は隙を見て、葵の手からスルリと抜け、思いっきり反対方向にダッシュ。
「あっ!」
葵は、不意を突かれて声を漏らしていたが、そんなの無視だ。
廊下にはたくさん人がいたが、
「———どけ!!」
俺はそう怒鳴り散らして道を無理やりこじ開ける。
「ちょ、ちょっと!待って!
———誰かそこの人止めてくださいッ!」
「誰が待つかよ!付きまとうんじゃねぇ馬鹿!」
くっ…、意外と速ぇなコイツ…!
俺は後ろをチラリと見てみた。
男子でも早いほうの俺にピッタリついてきやがる…。
…、
仕方ねぇ、アレしかねぇな。
「小・中学校体育成績共にオール5の俺をなめんなよ…」
俺は、ぼそっとそう呟くと、近くの窓枠に手をかけた。
…二階か。ま、この高さなら大丈夫か…
「——えっ!?な、何やってるんですか!危ないですよ!!」
葵だけでなく、周りもザワザワ何か言ってるが、それも無視。
「っと!」
俺は、勢いをつけて、そのまま勢いよく窓枠の向こうへ飛んだ。
空中で足を地面と垂直にし、足をばねの様にして、そのまま着地。
…そうして痛みを軽減させるつもりだったが、
——バキッ
俺の足の関節は、悲痛を上げた。
今の音はかなりマズい。
「っ…!
流石に痛ぇな…」
これゃあ…入学早々折れたかもな…。
———いや、今はそう言ってる場合じゃねぇ!
俺は、バッと上を見た。
俺の飛び降りた窓から、葵が覗き込んでおり、俺と目が合うと
すぐに走り去った。おそらく、俺を捕まえに来るのだろう。
『さっさと逃げねぇと…』
俺は、近くの部屋の窓の鍵が開いているのを確認すると、
何処の部屋か確かめないまま、窓から中に入った。
「ここは…」
俺は、その部屋の臭いを知っていた。
傷薬やの薬品の鼻につくこの臭い…
それに、妙に落ち着くこの感じは…
「…保健室、だな」
俺は確信をもってそう思った。
中学の頃、伊達に保健室でサボってた訳じゃないからな—————
「……だ、誰か…いるんですか…?」
と、その時。
不意に保健室の奥からか細い声が聞こえた。
「?」
ふと見ると、そこには二つくくりの髪の長い女が、
ギュッと自分の手を握りながら佇んでいた。
「あ、あの…此処に何かようですか…?」
目を伏せて、微かに声を震わせながら声を振り絞るように女はそう言う。
「あぁ、ちょっと追われててな。ちょっとの間でいいから隠れさせ———————」
俺はとにかく焦っていて、そんなつもりではなかったが威圧的にそう言ってしまった時、
その女と目が初めて合った。
と————
「…————ッ!?——ごっ、ごめんなさい、ごめんなさい!………!!」
突然、女が涙目になり、そう言いだした。
———て、…え!?
「はぁ!?待っ…何で泣くんだよ!?別にそんなつもりで言ったんじゃ——…」
——ズキンッ
「ッ!?」
思わず動揺して足がもたついた時、さっきの足の痛みが再び全身を突き抜けた。
俺はその不意の痛みに、フラフラと尻もちをつくような体勢で座り込んだ。
『……思ったよりヤベェみたいだな…』
ふと、初めて自分の足を見たが、かなり酷い捻挫になっていた。
青…というより紫っぽい黒。
酷ェなこれは…。まるで腐ってるみてぇだな…。
「…これは…酷い怪我、ですね……。ど、どうしたんですか…?」
と、
その時さっきまで半泣きだった女が、恐る恐る見て、そう言っていた。
「…」
俺は黙り込んだ。
…2階から飛び降りたなんて言えねぇし…。
思わず苦笑していると、その女は、オドオドしながら再び口を開いた。
「——よ、よかったら…手当てしましょうか……?打撲は早めに冷やしたほうがいいし…」
「…へ?」
俺は、少し意外だったため、思わずそんな間抜け声を出してしまった。
この女は…絶対俺みたいなタイプは苦手で、関わらないタイプだと思っていた。
だが、自分から俺にそう言ってくるとは…
「——あっ…ご、ごめんなさい!急に出しゃばって……!本当にごめんなさい…ッ!
…で、でも——怪我の手当ては早くしないといけないし…」
震えながらも、女は必死にそう言ってくるので、
無理に断って本当に泣かせる訳にはいかず、渋々俺は手当てを受けることにした。
*
「ね…ねぇ、さっきの見た!?」
「本当無茶するよねー」「何か怖いし…」
1年の廊下では、さっきの渚の飛び降りの事でまだザワザワしていた。
——と、そこに二人の人影。
「さっきの人…捻挫したんじゃないかな?着地した時の足の音は結構危なかったし…。
転校してきた僕がいうものなんだけど、高校生になったからってはしゃぎ過ぎだよ」
茶と黒が混じったショートヘアーの男の子が、溜息をつきながらそう言っていた。
「そう?ボクはああいうコ嫌いじゃないよ?張り合いありそうだし☆
…て言うかさ、お父さん聴力凄すぎじゃない?」
その男の子の隣にいた少し背の低い女の子は、関心しながらその男の子にそう言う。
「…いや、だからその呼び方は止めてって言ってるでしょ…?」
「えー、いいじゃんか別にぃ♪」
…そんな二人は、楽しそうにそんな事を言いあいながら、
面白い物を見つけた子供のような無邪気な瞳で、渚が飛び降りていった窓の外を眺めていたのだった。
そして、2・3年生も例外ではなく渚の飛び降りを見ている人がいたのだが…
渚がそれを知るのはもう少し後の事。