コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 青春ライン*ここは…変な奴しかいねぇのか!? 4話UP ( No.21 )
- 日時: 2010/07/04 17:51
- 名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)
4話
桜華岬川高校から数百メートル離れた街の路地裏。
そこに桜華岬川高校の紋章をつめた青年が一人、
携帯電話を片手にその場に座り込んでいた。
と、そこに不意の携帯コール。
———Pu ru ru ru ru ru...
携帯の画面に表示されている文字は、“新橋 葵”。
「…もしもし」
その青年は、口の横の怪我を拭きながら電話に出る。
『もしもし?あ、あの、ちょっと聞きたい事があるんですけど…』
「ん、どうした」
電話の相手がえらく慌てていたので、思わず神妙な顔で電話に耳を傾ける。
『あの、実は“東城 渚”っていう紅髪の人を探してるんですけど…
…見かけませんでした?』
…紅髪?
誰それ。
「見て……ねぇな。つーか今俺学校じゃないから」
『え?…まさかまた学校サボってます?』
疑う声で相手は青年に言う。
「違う違う。俺が故意で此処にいるんじゃなくてよ、カラまれた」
そう、青年は他校生にカラまれここまで連れ込まれたのだ。
『また!?大丈夫なんですか?』
「大丈夫、大丈夫」
青年はニコニコしながら、表情崩さず淡々と言葉を続ける。
「今、ちょうど全員半殺しにしたところだから」
…そう言った青年の足元には、
数十人の他校生の不良が呻き声を上げながら倒れていた。
『…………ッ、喧嘩…止めるっていってませんでしたっけ?』
電話の相手はその呻き声を聞くと、さぞかし恐ろしそうな声でそう言った。
「あぁ、そうだったな…。でも俺からはフっかけてねぇよ。
売られたケンカを買ったまでだ。
…最後に、不良の逃げ場は保健室な。コレ常識。
どうせ、その東城っつーガキも不良なんだろ?紅髪って事は。
——じゃあな」
ピッ
そして、青年は電話を切った。
で、青年はスッと立ち上がり、前髪を豪快にかき上げ、
その真っ黒なクセのある自分の髪をなびかせ、その場から立ち去って行った。
*
「…はい、これで——大丈夫だと思います…」
足を氷水で存分に冷やした後、捻挫の部分に冷えたシップを張り、
その上から丁寧に包帯を巻いてもらった。
本当は痛みが治まるまで冷やしていたほうがいいらしいが、
時間がないからシップにしてもらった。
ついでに固定もしてもらい…見事に骨折したみたいになっていた。
でも、おかげさまでなんとか走れそうだ。
「———あ…後、あんまり走らないほうがいいです……、結構酷い捻挫でしたし…。
本当は…もう少し安静にしているのがベストですけど、……い、急いでるみたいだから…」
女は、控え目にそういうと救急箱を棚にしまった。
「あぁ…、まぁ急いでるな。…でも平気だ」
俺は、とりあえず動く事を確認すると、よっこら、と、立ち上がった。
「————お前、名前は?」
「…———っ!?私の…ですか……?」
女は一瞬、ビクッとなりながらも、
「わ…私は“蚯蚓山 和歌穂”です……ッ!ご、ごめんなさい…!」
俺の問いにしっかり答えてくれた。
や、だから謝らなくても…
「…和歌穂、か。————悪ぃな、怪我の手当てさせちまって。
…じゃあな和歌穂」
『あんがとよ』
俺は苦笑しながらも、心の中で感謝の言葉を述べた。
でも、口には出さない。
「え……?」
和歌穂は驚き、そう声を漏らしていたが、恥ずかしかったので無視した。
そして、外がまだ安全だと確認すると、俺はそのまま保健室を後にした。
『………変わった不良…ですね…』
和歌穂は渚が出て行った窓を見つめて、そう思った。
「…あ」
そういえば名前…聞いてなかった…
じゃあ……また会った時に…聞いてみようかな…
和歌穂はそう思いながら、自分の手をキュッと握りしめていた。
*
保健室を出て、こっそり屋上に戻ろうとしていたその矢先、
俺は謎の二人組に見つかり、捕まっていた。…男と女だ。
「…お前等誰だよ、離せって」
俺は眉をひそめて、腕を離さない女と、側にいる男にそう言った。
「えー、嫌だけど?」
「ああ、ごめんね。ちょっと君の怪我の具合が気になって」
だが、二人は俺を逃がす気はないようだ。
「…いいから離せ」
俺はイライラした口調で言ってみるが、この女にはそんなの無意味で、
「嫌だなぁ、そんなに怒らないでよ〜」と、言っていた。
「————だってボク等はさ、キミを探してたんだよ?」
そして、ニコッと楽しにそうに女はそう言うと、ズイッと顔を近づけてきた。
「うぉっ…、近っ!」
俺は思わずそう言うが、相手はスルー。
俺の顔から足先までを何度も見直し、
「ん〜…キミは“イガグリ”だね!
ツンツンしてて、栗みたいに…熱くなったら(キレたら)怖そう!
我ながらいいじゃん!はい、決定〜☆」
と、喜びながらそう言った。
…、
『…何コイツ等…』
俺は話についていけず、苦笑を浮かべるしかなかった。