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- Re: 青春ライン*やべぇ…見つかった! 5話UP! ( No.26 )
- 日時: 2010/07/05 06:23
- 名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)
5話
——ガラガラガラッ
あの紅髪の男の人が保健室から去った後、
入れ替わるようにして今度は黒髪のストレートヘアーの女の子が入ってきた。
そして何かを探すかのように保健室を見渡し、ガクッと肩を落とし溜息をついていた。
「……あ、あの…どうしたんですか?」
私は、思い切ってその女の子に声をかけてみた。
「あの、ここに“東城 渚”っていう人が来ませんでしたか?」
息切れしながらもその女の子は、途切れ途切れにそう言った。
…よほど急いでいるらしい。
「“東城 渚”さんですか…?ご、ごめんなさい…。
私、知り合い居ないから…名前分らないんです…」
「あ、そうなの?いいよいいよ。
…それより、貴女も知り合い居ないの?私もなんだ!
—————よかったら友達にならない?」
…え…?
「えっ…あ、あのっ…それって…?」
私は、突然の言葉に思わず聞き返した。
…初めて会った人…だよね?
「だ・か・ら!友達になろ?
———友達つくる時は、まず自分から声かけるといいんだって!」
しかし、女の子は曇りない無邪気な瞳でそう私の目を真っ直ぐ見て言う。
『……勇気のある子だなぁ…』
初対面の人に…ましてや私に、友達になろって言ってくれるなんて…
「も…もちろんいいですよ!よ、よろしくお願いしますッ…!」
私は慌てて言い返した。
と、同時に凄く嬉しくなった。
思わず笑ってしまうそう…。
…久しぶりに友達ができた。
だけど…“あの人たち”みたいに手のひら返したりしない…よね?
と、思うと今度は急に不安になった。
…でも、その時はまた…私が我慢すれば…
「ん、どうしたの?
—————あぁ、そっか!自己紹介がまだだったね。
私は“新橋 葵”!1年1組です。よろしく!!」
「…あっ、……私は“蚯蚓山 和歌穂”です…」
『…でも』
私は自分の自己紹介をしながら思った。
『この子は…大丈夫な気がする…』
この子は“あの人たち”とは違う。
なんとなくだけど、そう思った。
…と、その時…
———ガラガラッ
また、保健室の窓が開いた。
そこには、黒髪のフワッとした髪形の男の子。
…まさか…不良…!?
「あっ——」
「……な、なんやとおっ!!?」
私と目が合うと、私よりも大きい声でその男の子が声を出した。
「……ふっ、僕も運がええなぁ。
入学早々君みたいな美人な人と巡り合えるなんて…」
そう言って、男の子は何故か私の手をやさしく握った。
「は…はぁ…」
『この人は一体…』
私が思わず苦笑していると、葵ちゃんが、
「ちょっと、斎藤君!今日で何人目!?」
そう言って私との間に割って入った。
「葵ちゃん酷いぃ!ちょっとその子とお近づきになりたかっただけやのにぃ〜…。
渚と一緒の事言わんといてよー」
『…渚?』
私は、ふとその名前を聞き思った。
葵ちゃんが探してた子の事…?
「——あっ、そうだ斎藤君!東城君見なかった?」
と、私が思っていた矢先、葵ちゃんがその斎藤君という人にそう言っていた。
「んー、渚?渚なぁ〜…………あ、そう言えばさっき僕の知り合いの女の子と、
誰か知らんけどもう一人、男の子にカラまれとったで♪
…まぁ知り合い言うても今日知り合ったばっかやけど、ナンパして」
『ナ、ナンパ…?』
私は思わず斎藤君をじっと見てしまった。
この人も…自分から声掛けてるんだ…、ナンパだけど。
「え、それ何処!?この校舎?」
「この校舎の二階の階段ンとこやでー。
渚、困ってるみたいやったけど、ワザと声かけんかってん。
…あいつ親友を足で引きずりよったから、そのし返ししたった♪」
口を尖らせて斎藤君が言うと、「分った、ありがと!」と言って、
葵ちゃんは保健室から飛び出して行った。
「あっ、葵ちゃ……」
私が声を出した時には、もう葵ちゃんはいなかった。
「あーあ、行ってもうたなぁ。———と、言う事で」
…あ、さっきの続き…かな
「君の名前、教えてくれへん?
僕は“斎藤 修哉”。好きなように呼んでな?」
「は、はぁ…」
『…なんかさっきの男の子と言い斎藤君と言い…変わった不良だなぁ…』
私は斎藤君を見て、改めてそう思ったのだった。
*
俺は、未だに二人に絡まれていた。
特に、女の方は中々腕を離さない。
しかも、イガグリって何だ、イガグリって…!
この女が男だったら殴ってるとこなのによぉ……。
「————あ、そうだ!」
と、
俺がそんな事を黙々と思っていると、突然女が口を開いた。
何だよ、と俺は思いながら女を見る。
すると、この女もあろうことか、こんな事を言い出した。
「…ねぇねぇ、イガグリ君!ボクと友達にならない?」
ブチッ
…、
…今日は厄日か?
何でこうも、女にダチになれだの何やの言われなきゃなんねーんだよ…!!?
俺はギラッと女を睨みつけた。
「テメェ等いい加減に…」
「———いたぁぁぁぁあああああああッ!やっと見つけましたよ!!」
と、俺が言おうとした時、誰かの声によってかき消されてしまった。
て——————…
……この声はまさか…
「っ!!?やっぱテメェかよ!!!」
そこに怒った形相で立っているのは、紛れもない———葵だった。
俺は思わず冷や汗を流した。
…ヤベェ…
何となくではあるが、何故かこの時俺は身の危険を感じたのであった。