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Re: 青春ライン*何でこうも俺は自由になれねぇ…? 6話UP ( No.29 )
日時: 2010/07/06 21:10
名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)

6話





俺は女の手をバッと振り払い、全力でその場から逃げた。

今度こそ葵に捕まったら面倒くさい事になる。それだけは絶対勘弁だ。



…俺の信条は『自由気まま』…。

———その為に、俺はここに逃げて来たのだから。




「ちょっと、イガグリ君————?待ってよ!」

「東城君、絶対にもう逃がしませんよ!!!」

ま…、つってもこの状況でそう言っても説得力ねぇか…。

———つーか、何であの女までついて来てんだよ!?

俺は思わず苦笑。

『——…このまま屋上に逃げても意味なさそうだな…、———やっぱ外か』

俺は後ろの二人の様子をチラッと窺いながらそう思った。

と、そんな事を考えていると、いつの間にか北校舎と南校舎をつなぐ渡り廊下まで来ていた。

『っと、時間稼ぎにでも鍵しめといてやるか』

俺は渡り廊下を渡りきったところで、ドアを閉め、すかさず鍵をした。

「———あっ!ひ、卑怯ですよ!空けてください!」

渡り廊下は校舎側からしか鍵が閉めれないので、

外にいる二人は向こうの校舎に戻って回り道しなければならない。

おまけに、あいつ等は俺が何処にどう逃げるか分らないので、

こっちにすればかなりの時間稼ぎになる。

…中学の頃、これでよく先公センコウをまいたもんだ。

「ざまぁねぇな、葵と女!

 …これ以上俺に付きまとうんじゃねぇ、じゃあな」

俺はヘッと笑ってドア越しの二人にそう言った。

「ぐぬぬぅ…!」

「酷っ!ボクにも“陛砥 翠憐”って名前があるんだから、名前で呼んでよ〜…」

葵は悔しそうに声を上げ、その翠憐と名乗った女は脹れながらそう言っていた。

…いや、今聞いた。名前は。

と、心の中で突っ込みながら、俺は悠然とその場から去っていった。







『やっと…自由か…!』

目の前にあるのは、何故か少し恋しかった校門。…やっと辿り着いた。

足は痛むし、訳の分からねぇ考えしてやがる二人に全力で追いまわされるし…

「——はぁぁぁ…」

俺は疲れ切って溜息をついた。

ここ、変な奴多いのか?

…つーか、この高校…変わってんなぁ。

俺は、校舎を見つめつつふとそう思った。


———俺にしろ斎藤にしろ、不良は不良だ。俺たちだけでなく、不良は何人か見かけた。

だが、普通は不良は落とされるもんじゃねぇのか?こういう有名な高校は大抵…。

不良が仮に暴力事件起こしたりすると、高校の名誉に関わる可能性がある。

未然にそれを防ぐ為、受験の面接の地点で不良は落とされるはず。

…冷静に考えてみればそうだ。

なのに、実体の所不良が何人か受かっている。———奇妙な話だ。


それに、妙な奴が異常に多い気がする。

一体何なんだ?この高校は…



…、

……まぁいいか。

あんま興味ねェし、そこまで深く考える必要もねェしな…。


俺はそこでその考えをスッパリと切った。

『今は…少しでも俺の好きなようにするべきだな』

と、言ってもやる事がない俺は、ブラブラ気ままに過ごす事にした。


まぁ、また俺の自由は奪われる事になるのだけれど。



*


『あーもう、マジ鬱陶しいんだけどコイツ…』

街中での事、誰かが心の中で溜息をつきながらそう思っていた。

そう思っている彼女の視線の先には、チャラついた男が一人。

さっきからこの男が「ねぇ、何処行くのー?」だの「ちょっと遊ばない?」だの…

…マジで勘弁してほしい。

そう思っている彼女は、さっきから男の事を無視しているのだが…

男のほうが中々しつこい。

『———あーあ、こんな事ならお兄ちゃんから離れるんじゃなかった…』

お兄ちゃんがいたら、こんな奴絶対寄り付かないのに…。


——そうだ、いっその事誰かを彼氏を見繕ってやろうかな。

同じ学校の奴だったら、後で事情を話せばどうにでもなるし!

そう考えている彼女の胸で、桜華岬川高校の校章がキラッと光った。


『て———こんな時間に自分の学校の奴と会うこと無いか…。

 あそこガリ勉多いから、授業は皆出てるだろうし…』

ちっ

しかし彼女は、その事に気が付いて心の中で舌打ち。

…一人くらい不良みたいな奴いないのかな。

「学校ダリィ」とか言ってる男とか一・二人くらい…。


————と、

そんな事を考えている時だった。

「はぁ…、学校ダリィ…。

 変な奴等につけられるわ、打撲はするわ、おかげ様で疲れたっつーの…」

…いた。

想像してた事と同じ事言ってる紅髪の男…ある意味典型的な不良が、前方から。

しかも、あの校章は…桜華岬川高校の校章じゃん!?

彼女は、ひゃっほう!という気分で走り出した。

「——も〜、遅いジャン!私、待ってたんだからねっ♪」

そう言って、紅髪の男の腕にガシッと掴まった。

予想以上にその男はイラッとした顔で私を睨んできたけど、

「———ゴメン!助けてくれない?」

ボソッとその男の耳元でそう言うと、男は私を付きまとっていたチャラい男を見て、

ただ舌打ちだけをした。「面倒くせぇ…」って感じの。

聞き分りのいい不良でよかった…!さんきゅっ♪

「…、

 ちっ、彼氏持ちかよ…」

そして、散々つけまわしてきた男は私の彼氏(仮)を見ると、

そう言って早々と退散して行ったのだった。


ナイス、紅髪の不良サン!

私は心の中でそう言うと、とりあえず目的地まで

その紅髪の男に付いて来てもらうことにしたのだった。