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Re: 青春ライン*コメディ ( No.3 )
日時: 2010/07/03 06:26
名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)

2話





「————つまり、こう言う事やねんな?」

俺と斎藤は、屋上で出会った“新橋 葵”の話を聞き終えると、

フム、と溜息をついた。


この新橋 葵は、どうしてもこの高校に来たかったらしい。

だが、友達は他の高校に行ってしまい、この高校には一人で来たそうだ。

「で、友達おらんからここに逃げてきた…と?」

「人見知りかよ…」

俺はハッと鼻で笑って、寝そべった。

つまんねぇ、友達とかどうでもいいじゃねーかよ。

「ち、違います!人見知りとかじゃなくて、

 何か…カシコそうな人ばっかりで話しかけにくいっていうか…」

…有りがちなパターンだな…。

「へぇ、じゃあ先輩とかで顔見知りは?」

「たくさんいますよ!でも…同級生がいなかったら意味がないんじゃないかと思って…」

上には顔見知りアリ…か。

俺は興味無いようにしながらも、一様話は聞いていた。

「ふーん、そうなんやな…」

斎藤は腕組みをしながら、うーん、と難しそうに唸っていた。

どうやら、男と女の友達の価値観の違いを把握しながら、

どう言うべきか考えているようだった。

「しかも、何か気の合いそうな人いないし…

 じゃあいっその事話しかけてもらうまで待っとこうかなって…」

「…あのなぁ、ダチつくるっつっても、まず話しかけなきゃ意味ねぇじゃねーかよ」

俺は見てられず、葵の言い分に反論するようにそう言った。

「人を見た目で判断すんなって、気が合うか合わないかは話しかけなきゃ分かんねーだろ」

俺は、寝そべっている状態から座りなおし、睨むようにして葵を見た。

「それに、待ってるだけじゃダチなんかつくれねェんだよ馬鹿。つくりたきゃ自分から話しかけでもしろ」

はい、悩み解決。さっさと屋上から消えてくれ。

俺はそれだけ言うと、追い出すように葵を屋上から送り出した。

しかし、斎藤は「女の子一人とか心配やん☆」とか言ってついて行った。

「どいつもこいつも…勝手にしてろ」

俺はその様子を見ながら舌打ちすると、目を瞑った。


…そういえば、ここに来るまでにクラス分けをチラッと見てきた。

斎藤は2組で、俺は1組だった。

———て、友達いねぇの俺じゃねーか。

俺は、今その事に気がついた。

…まぁ、いいか。死ぬわけじゃねぇしな。

大体新しい友達とかいらねぇ。

どうせこの高校だ、がり勉ばっかで俺と気の合うやつなんて(斎藤を除いて)いねぇだろうし。

ま、斎藤はどうせ女友達は多くつくるんだろうけどよ。


そんな事を考えながら、俺は深い眠りについた。

が、そんな時間はそんなに長くはなかった。


約一時間たった時、屋上のドアが勢いよく開いた。

『あ゛〜…うるせぇ!誰だよ!?』

俺はギロッと睨むと、そこにはさっきの女、葵が立っていた。

「…今度は何だ—————」

「友達っ…!たくさんできましたよ!!」

肩を上下させながら、声を絞り出しながらそう俺に言った。

どんだけ走ってんだよ…

「へぇ、よかったじゃねぇか」

俺はそれだけ言ってまた寝そべった。

友達できたんならよかった。だったらもういいだろ、俺の所に来るなって。

「はい!ありがとうございました!!」

すると葵は大きくお辞儀をしながら、そう俺に言った。


そして何故か、そう言うと俺にそばに寄ってきた。


「さぁ、行きますよ!」

そして笑顔でそう言うと、俺の腕を掴んで引っ張った。

「———はぁ!?何処にだよ!」

俺は訳が分らず、思わず驚きながらそう言った。

「何処って…教室ですけど?」

葵は、キョトンとしながら当たり前のようにそう言う。

…教室だと?

「だから、何で俺が行かなきゃなんねーんだよ!!

 しかも、今日会ったばっかりのお前と!」

俺は若干いら立った声でそう言ったが、相手はお構いなし。

しかも、あろうことか葵はこんな事を口走った。


「え?だって私たち友達じゃないですか」


ビキッ

「…何でテメェと俺がダチなんだよ…!」

流石にキレそうになったが、俺はそこを押さえてそう言った。

「何言ってるんですか?

 “ダチつくりたきゃ自分から話しかけでもしろ”って言ったのあなたでしたよね?

 …で、確かあの時、あなたから私に話しかけてくれたじゃないですか!」


…は?

…、

……、

…ッ!!?

俺は、とこでハッとした。

『そ…、そういう事かよ…』

俺はその話を聞いた時、俺がとんでもない事を口走っている事に気がついた。


初めに、俺は葵に話しかける

       ↓
 
葵から相談を受ける        

       ↓

俺は「ダチつくりたきゃ自分から話しかけでもしろ」と葵に言った。

       ↓

つまり葵は、俺から葵に話しかけたことで、俺が葵と友達になったと思っている。


…、

何やってんだよ俺…


「———さ、行きますよ!教室」

ちくしょう、そんなつもりで言った訳じゃないが…

…言った事実には変わりねぇ、か…

屁理屈言いやがって… 



悔しいが言い返せない俺は、半分放心状態のまま葵に引きずられ教室に向かう事になった。

嗚呼…何か俺は大変な過ちを犯した気がする。

けど、今さら気付いたところで…もう、どうにもならなかった。