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Re: 青春ライン*何で俺は自由になれねぇ…? 6話UP ( No.32 )
日時: 2010/07/09 21:17
名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)

7話




「ふぅ…!ホント助かった!ありがとねっ♪」

昼下がりの空の下、俺は女に捕まって公園までに連れられていた。

て———俺今日何回女に捕まってんだ!?

『冗談じゃねぇ…、いっその事もう帰ろ…』

「はぁぁぁ…」

俺はまた溜息をついた。

あの時、とっさにコイツの言う通りにしてやったが…

…まさか2キロ近くも歩かせられるとはな…

「…ね、そう言えば何で助けてくれたの?」

と、

俺が一人であれこれ考えている時、隣の女がそう言った。

「あ?」

俺は質問の意味が分からず、聞き返した。

「…だってさ、普通ああ言う時ってアンタみたいなタイプはガン無視しない?」

「………」

……あの時、少しだけこの女の苦労が共感できたというのもあった。

俺も学校で、女に散々追われたので、

この女が男につけまわされて、鬱陶しい、と思う気持ちは理解できる。

助けた(事になってるみてぇだけど)、特に理由といえばそれくらいで、

いつもだったらコイツの言う通りガン無視してるとこだった。面倒クセェし。

「…あの時はたまたまそうしただけで、テメェを助けるつもりでああやったんじゃねぇよ」

「ふーん…

 あ!あたし五十嵐 柚季、以後よろしくっ☆」

と、女が明るめの声のトーンで言う。

…以後って……もう会う事ねぇだろ。

街でたまたま会っただけなんだからよ…

俺は苦笑を浮かべながら女を見た。

と、その時俺は女の付けている校章が目に入った。

…うっ……!

……マジかよ…。

女が付けている校章は————紛れもない桜華岬川高校のものだった。

「アンタ、桜華岬川高校だよね?学校で会うかもだねっ♪」

勘弁してくれ…

葵だけでもうんざりしてんのに…

「…本当勘弁してくれ」

思わず俺は呟く。

“自由気まま”

…この学校で、きっとそれはできないだろう。

今、いや…葵に追われた地点でそう確信した。

『…あー、くそっ…』

激しく鬱だ。

憂鬱でたまらない。

斎藤、カムバック。

今、何故かお前に会いたい。

俺は心の中で強くそう思った。

と、そんなブルーな俺を横で見ていた柚季は、

「——ねぇ、ちょっと待ってて?」

そう言ってスクッと立ち上がった。

「…は?」

何で?という顔で俺は柚季を見る。

「いいからっ!とにかく待ってて!」

しかし、柚季はそんな俺を無視して、俺を置いてどこかに行ってしまった。

…、

アイツ、俺を置いていきやがった…

————…



俺はふっと空を見上げた。

雲が流れてゆく。

……、

——“アイツ”…、元気にしてるかな…


いつの間にか、俺は感傷的になっていた。


——…俺の事、今でも許せねぇんだろうな…

——俺が…全部悪ぃんだから…


あの時、

中学の時…“アイツ”は、—————姉は家族の前からいなくなった。

…何も告げぬまま、手紙だけ残して。


…俺が悪いんだよな———全部。

アイツを追い出してしまったのも、家族が変わったもの…。



——ピトッ

と、

との時、不意に冷たいものが俺の頬に当たった。

「———ッめてぇ!?(冷てぇ)」

俺はあまりにも不意な事だったので、思わず飛び上がるかという勢いで飛び起きた。

振り返ると、キンキンに冷えたペットボトルを持つ柚季がいた。

「な、何してくれてんだテメェ…!!」

心臓をバクバク言わせながら、俺はそう言った。

…今思えば、さっき俺の考えてる事は誰かに聞かれてたわけじゃない。

だけど、“あの事”を考えている時に——ビックリさせられると本っ当に焦る。

「——え、何?変な事でも考えてたワケ?」

そんな俺の様子を見た柚季は、不信感を抱くような目で見てくる。

「違ぇよ馬鹿」

俺はやつ当たるかのように柚季にそう吐き捨て、

その場をから去ろうと立ち上がった。

「———あ、帰るの?」

すると、少し残念そうな顔をしながら、あの冷えたペットボトルを手渡してきた。

「はい、助けてくれたお礼ねっ☆

 ———じゃあ、お兄ちゃんに見つかるとヤバいからあたしも帰るね♪」

「バイバイっ☆」と柚季は手を振り、

何度もお礼を言いながら街中にあっという間に消えていった。

『…、

 わざわざ買ってこなくても…』

俺は柚季を見送りながらそう思いつつも、

喉がかなり渇いていたのでその飲み物を一気に飲み干し、

公園のごみ入れに空のペットボトルを投げ入れた。

そして俺は、自分アパートに向けて歩きだした。


*


街を一人で歩いていると、やはり周りからの目線が痛い。

『鬱陶しい…』

俺は心の中でそう吐き捨てながらも、警察だけ意識しながら帰っていった。

補導されるわけにはいかねぇからな。

と、その時


——ズキッ…


…っ、足痛ぇ…。

そういえば、

さっきから足の痛みは徐々に悪化していた。

学校で走ったし、街では長い距離歩いたし…かなり足に負担がかかっている。

早く足を休まさないと、流石に病院に行かなくてはならないようになる。

まぁでも…このまま真っ直ぐ家に帰れば休めるし、さほど問題はない。

『さっさと帰るか—————』

と、

背伸びをした時だ。


——ドンッ

前から走ってきた集団と、肩がぶつかった。

『…どこ見てんだコイツ等…!』

俺は、その集団を睨みつけた。

すると、相手の集団も「…痛ぇんだよクソ野郎が…!」と、ガンを飛ばしてきた。

「……」

イラつく。

だが、俺はふいっと顔を逸らし、また歩き出した。

今は、こんな奴等にかまっている暇はない。

早く足を休ませたい。

…しかし、相手はそれが気に食わなかったのか、

「待てよテメェ、

 スカ(無視)してくれるとは…いい度胸だな?」

と言い、

後頭部を—————思いっきり殴ってきた。

——ズ…キッ…

「っ…!」

俺は、思わず地面に片膝をついた。


……、

「————ブッ殺す」


俺はゆっくり立ち上がると、

殴ってきた奴の顔面を…鼻が折れるかというくらいに殴り返した。



もう我慢の限界だ。

…フッかけてきたのはそっちだ、



————————鬱憤ぐらい、晴らさせろ。