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Re: 青春ライン*おい…喧嘩で鬱憤晴らさせろ!! 8話UP ( No.39 )
日時: 2010/07/23 21:34
名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)

9話




「……え?あの紅髪の人の怪我の具合…ですか?」

再び保健室、そこには私、葵、斎藤、翠憐と董と名乗る二人組という面子がいた。

状況把握がイマイチできぬまま、私は葵ちゃんや翠憐ちゃんの一方的に質問攻めされていた。

斎藤君は何かと私の側にいるけど…何かと口説いてくるし…。

私はそう思いながら苦笑した。

そして董君はというと、葵ちゃんと翠憐ちゃんの暴走の中和役(?)を務めていた。

「——そうそう、イガグリ君の足の具合!まぁボクはイガグリ君に会うだけでいいんだけど————」

私の返事を聞くと、翠憐ちゃんは身を乗り出しながらそう言い、

チラリと葵ちゃんの方を見た。

「…はい、私が少しその東城君の足の具合が気になって…。

 あ、東城 渚って言うんですけど、怪我してるのに学校から逃げちゃって…」

…“東城 渚”

あの人…そういう名前だったんだ。

最初葵ちゃんと会った時、そう言えば葵ちゃんが口にしていた名前だった。

「あのアホは何を…

 よく入学式早々大胆な事やりよるなぁ、完全先生共に目ぇつけたな」

斎藤君はと言うと、そう笑って話を聞いていた。

「もう…翠憐と葵ちゃんが追い回すから…;

 …まぁ理由はともあれ、その東城君の行き先が気になる所だね」

「————あ、それなんですけど」

と、董君の言葉に葵ちゃんが反応した。

「東城君の居場所分ったんです!ただ——————」

しかし、そこまで言うと葵ちゃんの表情が急に暗くなり、

苦笑いしながら葵ちゃんはこう言葉を絞り出した。


「——ただ…東城君の怪我が酷くなるかもしれない…です……」







「ぅ……っ…!」

そう苦悶の声を上げているのは、紛れもない俺だった。

相手の顔面に蹴りをぶち込んだ所まではよかった。

だが、その衝撃に耐えきれず————足が折れた。

頭に血が上って、捻挫している事をすっかり忘れてしまった結果がこれだ。

俺はとっさにしゃがみこみ、足を押えた。

俺とした事が…、ずっと蹴りで喧嘩してきたからか…

相手はと言うと…俺が完全に動けなくなった事をいい事に、

俺の頭を蹴り、思い切り踏みつけた。

「!」

バランスを崩し俺の頭は道にぶつけられただ、ソイツは尚も俺の頭に圧力をかける。

『くっ…

 …調子乗んなよコイツ等………!』



———プツッ


俺はそこで、頭の中が真っ白になった。

思考停止状態。

足から急激に痛みが引いてゆく。

訳も分らないうちに体が勝手に動き、いつの間にか相手の足を押しのけ体勢を整えると、

今までに出した事のない勢いで相手の顔面を潰す勢いで殴りかかっていた。

「ぶっ……!」

相手はとっさの事でよけきれず、その餌食になった。

———ズキッ

と、そこでまた徐々に足の痛みが甦ってきた。

『————と、危ねぇ…。もうちょいでキレるとこだった…』

俺はその痛みを感じると、少し安心した。

…もしキレてたら、騒ぎが大きくなって———最悪、入学早々停学になるところだった。

実際…一瞬キレたが、まぁセーフ…という事にしておこう。


しかし、相手のほうはというと…

「この餓鬼が…!調子に乗りやがってぇえええっ!」

と、ブチ切れ、真正面から猛烈なパンチをくりだした。

『———…、

 あー、無理だ。よける体力残ってねぇ…』

だが、俺は心の中でやけに冷静にそう思った。

足怪我して、追い回されて、歩かされ、そして喧嘩。

もう体力など残っている筈もない。

しかも、足の痛みのせいで足は動かないし…避けれるわけがない。

俺は、殴られる事を覚悟した。

———しかし、それはその時だった。



「…見つけたぜぇ…」



その声は、低くあまり大きなものではなかったはずなのに、

やけにその声は大きく聞こえた。

「————?」

俺とその集団は、一斉にのこ声のした方向を向いた。

そこには、背の高い少しクセのある黒髪のオールバックの男が立っていた。

そして、荒々しい形相でこちらを睨み、恐ろしいと言ってもいいほどの笑みを浮かべていた。

「手間ァかけさせやがって…流石にイライラしてんだけどよぉ」

男はそう言いながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。

…俺の事、か?

俺は背中に寒気を走らせながら、ゴクリと唾を呑んだ。

葵の知り合いか?じゃないと、こんな男が俺を探すはずもない。

つーかこの男…絶対ヤバい。

見たら分る、この男は危険だ。

逃げろ、じゃないと本気で殺させる気がする。

…そんな感じだ。

「大体よー、テメェが悪ぃんだろ?なのに何で逃げんだ」

…いや、それは俺は悪くねぇよ。あいつ等がしつけぇから…

心の中でそう思った。

が、その瞬間、その男は俺の緊張感をフッ飛ばす発言をした。

「テメェが喧嘩フッかけて来たんだろ?なのに1番に尻尾巻いて逃げやがって—————宇都宮よぉ」



『“うつのみや”?』

誰だ宇都宮って…

と、思った時———俺に殴りかかろうとしていた奴が、

「…何で…テメーが此処にいんだよ!」

と、叫んでいた。

…、

あぁ、俺じゃなかった訳ね…

拍子抜けだが、でも、何やらその二人に険悪なムードが漂っていた。

「俺はもう不良から更生したっつったろーが…!

 ———なのに喧嘩売るマネなんてしてくれやがって…、ブチ殺されてぇか!あぁゴラァ!?」

いやいやいやいや、

言ってる事と辻褄合ってねーぞこの男…思いっきり喧嘩腰じゃねーか。

「なっ…!あ、あいつ等は…?

 ———どうやって此処に来たんだよ!?大勢…20人も居たんだ、逃げれる訳がねぇ!」

その宇都宮と呼ばれていた男は、悲鳴を上げるかのように男にそう言った。

その男はその問いにイラッと表情を歪ませながら、「そりゃあ———決まってんだろ」と口を開いた。


「…全員動けなくなるまで俺が相手してやったに決まってんだろーが」


——20人っつってなかったか?

俺は驚きのあまり目を見開いた。

そうか、この宇都宮っつ—奴…俺の前にもコイツに喧嘩フッかけてた訳か…

…つーかコイツ、『さっきアイツにちょーっと痛い目に遭わされたから———』つってたよな…

…という事は…

俺は、息を飲んだ。


コイツ等が全員、絶対的な脅威として視ていたのが————この男ってことか。


この威圧的な感じに見るからに危険な男…コイツ等が脅威に思うのも分る気がした。