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- Re: 青春ライン*最も危険な男… 9話UP ( No.42 )
- 日時: 2010/07/27 21:03
- 名前: 梓 ◆hRE1afB20E (ID: 8I/v6BBu)
10話
「…お前が『東城 渚』だな?」
ふらりと現れたその男は、しゃがみこんでいる俺にそう言った。
「…あぁ…」
俺は、その男に対しての警戒を解かぬまそう言う。
すると男は、「テメー…入学早々騒ぎを起こすな」と、
若干イライラしながら俺にそう言った。
『……ッ』
と、その時俺に言いようもない恐怖が俺を襲った。
殺される気がする…
「————くっ…、
こいつに勝てる訳ねぇ…!おい、行くぞ!」
一方、俺に絡んできた奴等はそう言い、180度体の向きを変え逃走を計っていた。
しかし、男がそれを見逃す訳もなく、宇都宮の後頭部に持っていたカバンを
叩きつけるように投げ飛ばした。
————ゴッ
「……かっ…!」
そのあまりに猛烈すぎる追撃に、宇都宮は声にならない声を出して、
道にぶっ倒れながら昏睡してしまった。
…それは、一瞬ともいえる早業だった。
*
「……」
俺は、その光景をボーっと眺めていた。
助かった
だが、どの道この男から逃げないと———学校に逆戻り…
…って、骨折したから病院か?
……そっちは余計にカンベンだ。
そう思えば、まだ学校のほうがいいか…
「…立てるか?」
と、俺がそんな事を考えていると、その男は両膝を折り、俺の目の前でしゃがみ込んだ。
「あー…、つーかよぉ、できればあんまり騒ぎ起こさねェで欲しいんだわ、
その度に俺が先生とか生徒会に文句言われんだからよォ」
…「学校に泥塗るような真似はしてくれんなよ?」と言いながら、
男は面倒くさそうに頭をかいていた。
………そうか
俺はやっと合致がいった。
コイツ…普通に20歳くらいの大人だと思ってたが———桜華岬川高校の3年な訳か。
何で葵がこんな大人と、いかにも危なげなこの男と、
何故知り合いなのか疑問に思ってたら…この男はアイツの言う“上級生の知り合い”って訳か…
「———以後気をつけとく…」
俺はそんな事を考えつつ、苦笑を浮かべながらもそう言うと、
男は満足げに表情を和らげた。
「素直なのは嫌いじゃねぇ。
…それを守ってくれさえすりゃあ、俺から言う事はもうねぇよ」
そう言うと、男は徐に携帯電話を取り出し、誰かに電話をかけ始めた。
「…お前歩けなさそうがから迎え頼んどくから」
「———どうも」
俺はそう言うと、近くにあるベンチまで肩を貸してもらいつつ座った。
『…見た目とは反比例して———いい奴だな…』
俺は携帯電話に耳を傾け、面倒くさそうに欠伸をしている男を眺めつつ、そう思った。
「—————五十嵐?俺だ」
『…え、マジで!?雲仙ジャン!!何、謹慎から復帰?おめっと〜』
すると、電話の向こうからやけにテンションの高い声が聞こえてきた。
『つーか俺に用?俺、今ゆずとはぐれてそれ所じゃー…
———そうそう、聞いてくれよ!俺のゆずがさあ、今日も可愛いわけ!
お前にも見せてやりてぇよー、しかも今日から高1で制服着てる訳ジャン?
似合うのなんのって、———あぁ〜ヤッベェ!超可愛い!思い出しただけでテンション上がる!
…なぁ、俺のこの気持ちわかる!?』
————なーんか…エラい変わった奴と電話してんだな…
俺は若干温度差を感じながらそう思った。
無論、電話をしている男、雲仙と呼ばれたその人物も、
余計に面倒くさそうな顔をしながら溜息をついていた。
「…相変わらずシスコンだな、五十嵐ィ。肝心の妹はまったくもってブラコンじゃねーから安心しろ。
後、その自慢話も後回しで———実はお前に頼みたい事があってな」
そして、ピシャリと切り捨てるようにそう言うと、真面目な声でそう言った。
『ん?お前が頼みごとって珍しいな…———あ、そうか、聞いてる聞いてる!
東城ってやつだろ?葵からさっき連絡があってな、事情は大体把握済み』
「じゃあ話が早いな、今からバイクでこっち来てくれ。
嫌っつったらどんなるか分ってんだろうなテメェマジ泣かすぞ全力で泣かすぞ」
『脅し!?待て待て暴力反対。大体お前、不良から更生したって言ってなかったか!?』
…あ、ソレさっき本人も言ってたよな…
俺も電話の相手の五十嵐って奴に同感した。
すると雲仙は「…っだぁぁぁああああああ!またやっちまった…!!」と絶叫していた。
「くそ…、何やってんだ俺…言葉や言動には注意してるってのに…
——俺は不良じゃない不良じゃない健全な男子高校生だ、ただの男子高校生っつってんのに何やってんだ俺マジ殺すぞ」
————ダメだなコイツ…
俺は心の中でそう言った。
そしてそれと同時に、電話の相手でもある五十嵐が、
『直ってない、直ってない、自己暗示全く効果ないし!とても言葉に注意して発言してるとは思えねーから』
と、雲仙と立場が逆転して、呆れてそう言っていた。
「ぐぬぅっ…————い、いいから来い!
五十嵐、1分で来いよ、1秒でも遅れたら———その、なんだ…ボコるから」
『…、
…ダメだこりゃ。お前、言い方変えてるけど対して内容は変わってないからな?ソレ…
—————まぁ、とりあえずそっち行くから待ってろ!』
…何だかんだで話がまとまったらしい、雲仙は「1分な」と念押ししてから電話を切っていた。
切る直前に、『いや、ソレは無———————』と聞こえたが、
雲仙も俺もあえて無視した。