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- 第参話「試験といのちと」 ( No.16 )
- 日時: 2010/08/20 10:38
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: 3mln2Ui1)
第参話「試験といのちと」
神様はどうやらいないようだ。いないに決まっている。だってそうだろう?いたら、この世の中には戦争なんてなかっただろうし、罪もない貧しい子供たちが餓死をするなんて事も起こるはずはないと思う。何せ、神様って奴は慈悲深いそうだからな。
そしてああ、なんて空が青い。死ぬのに絶好の日だ。
俺、山田 太郎は人っ子一人いない廃墟ビルの屋上へと来ていた。幸いここらへんは人気がなくここから飛び降り自殺をしたとしても、下に人を巻き込まずにすむ。しかも、このビルの高さは飛び降りたら即死確実な高さだ。
もう、屋上を囲んであるフェンスは乗り越えたから俺の自殺を邪魔するものもないだろう。俺はこの世界、いや、人生に絶望を覚えたのだ。
「いやあぁぁあぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!!」
What?
俺は悲鳴の聞こえた方、即ち上にある空を見上げた。思わず、我が目を疑った。
なんと、空から人が物凄い悲鳴(高さ600mからバンジージャンプをしたってこんな悲鳴は上げないだろう)を上げ、これまた物凄い速度で俺のすぐ目の前を落下。この悲鳴の声の高さからして少女だろう。パラシュートもつけずにスカイダイビングとはすごい度胸だ。ってんなわけあるかっ!!!
って突っ込んでいる場合じゃない!俺は思わず空を見上げた。そこは先程となんら変わらない青空が広がっていた。飛行機も飛んではいなかった。あの少女はどこから?
——ボフンッ
……ぼふんっ?いやいやいや……落下音って違くね?違うよね。もっと、こう。ドスンッとか。
ってまた突っ込んでいる場合かっ!!!俺は慌ててフェンスをよじ登り、空から落ちてきた少女のもとへと向かう。といってもここは使われなくなって久しい廃墟ビルだ。もちろん、エレベーターなんて便利なものがあるはずもなく俺は親から貰った自分の足で非常階段を駆け下りる。さすがに五階も階段を駆け下りるのは疲れた。転びそうにはなるわで。
三分前の自殺しようとした自分が恨めしい。なんでこんな非常識なことが起こる日に自殺しようと思ったのだろう。やっぱり今日はいつも通り、会社に行って普通に過ごすべきだった。
そうこうしている内に俺はあの空から落ちてきた少女のもとに来た。
「あの、大丈夫ですか?」
俺は遠慮しがちに少女へ声をかける。それにしても、この子、変な格好をしているな。上は和服に下はミニスカートだなんて。
俺の声に反応して、少女ががばりと跳ね起きた。
そして、俺を見るなり、
「あー!あんたが?!」
と意味のわからない事を言って、俺の胸倉を掴んだ。
「あんたのせいで私、死にそうだったんだからね!!」
半ば半泣きで少女は俺に怒鳴る。というか、生きていらしゃったんですか?貴方何者?
神様、貴方様を否定した俺が悪うござんした。だから……許してください。いや、マジで。だから、こんな訳のわからない事に俺をまきこまないでください。
俺はいるかわからない神様に心の中で謝り、勇気を出して言った。
「いや、何訳のわからない事を言うんだ!?きみは!?」