コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第零話 ( No.2 )
日時: 2010/07/28 14:04
名前: 神村 (ID: 3mln2Ui1)

第零話

 ああ、まただ。
 ぼんやりと思った。いつも繰り返される夢。ほんの短く、けれど鮮烈に記憶に残るその夢。
 浮かぶのはただこちらを見る一人の人。逆光を浴びているかのようにその姿はおぼろげだ。不思議なことにその人物の周りや背景は思い出せない。例えるならば、霧が一面にかかっている様な。霞がかるといってもいいかもしれない。
 そして、その人物は決まってこう言うのだ。
「また会いましょう」
 と。ひどく中性的なその声は慈愛に満ちていた。表情は残念ながら見えないが、きっと微笑んでいるのだろうと勝手に思った。だってそれほどまでにその声は優しい。
 これで目が覚めるのだろうな。と目を閉じる。これまでも度々この夢を見てきたが、決まってこのタイミングで目が覚めるのだ。
 しかし、今回は違った。
 目が覚めることがないことに気付き、そっと目を開けるとあの人が何かを言って、微笑むのが見えた。囁くように言われたその言葉はこの耳に届くことはなかった。




「あれ?」
 あの後あの人はなんて言ったのだろう?と疑問に思いつつ、黒髪の少女は起き上がって支度を始めた。今日はなんたって特別な日なのだ。