コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 第参話「試験といのちと」 ( No.24 )
- 日時: 2010/08/20 10:49
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: 3mln2Ui1)
更新、遅れてすみませんでした(平謝り)ーー!!忘れてしまったかと思いますが続きです。
俺はいるかわからない神様に心の中で謝り、勇気を出して言った。
「いや、何訳のわからない事を言うんだ!?きみは!?」
すると少女はああ、と納得した声を出し俺を掴んでいた手を離した。
「いやぁ。ごめん、ごめん。勘違いしちゃってさ。そういえば、自己紹介しなくちゃね」
あはは……と少女は苦笑した。
「はぁ……」
対する俺は曖昧に頷くしかない。
「じゃぁ、私から。私、神門 来歌。職業は神様見習い☆」
イェイ!と言わんばかりにハイテンションでブイサインをする(自称)神様の来歌さん。………この子、十五か六だよな?頭、大丈夫なのか?っていうか神様って職業なんですか?
「そういえばさ。あんた、何で自殺なんかしようとしたの?」
…………………はい?
俺は思わず絶句した。え?むしろこっちの台詞ですよね。それ。目の前でパラシュートもなしにスカイダイビングをかました人の台詞かな?天空の城ラ●ュタもびっくりだよ!
しかし、目の前の少女にはさっきまでのふざけている雰囲気なんてなかった。
「あんた、命の重みって奴わかってる?死ねば確かに今の状況からは逃れられるかもしれない。でもね、もう二度とあんたっていう人の人生は歩めないんだよ?」
やけに真剣に語る目の前の少女の言葉に俺は何故か苛立った。何で赤の他人のしかも頭のおかしい子に説教をされなくちゃいけないんだ。そう思うと急に俺の中で何かが爆発した。多分、今まで溜まっていた怒りとかだろう。俺はそんなに怒ることはないから。
「なんで赤の他人の君にそんなことを言われなくっちゃいけないんだ!!!君に何がわかる!?しかも、神様だと?!人をおちょくるのもいい加減にしろ!!そんなお気楽学生の君に命の重みなどわかるものかッ!!」
頭に血がのぼった俺は少女に怒鳴ると足早にその場を立ち去った。きっと今の俺は鬼のような形相だろう。少女の方はいきなり俺がキレたのに驚いたのか呆然としていたような気がする。だが、俺には関係ないと頭を振って忘れようとした。
自殺をしようとした青年が怒って去って行った後、来歌は呆然と立っていた。
「おい。何をぼけっとしておる。さっさと追わんか!馬鹿者が」
「!」
来歌は勢いよく振り返った。そこには久遠が不機嫌な様子を隠そうともせずに立っていた。
「え?でも……」
「あれはどう見てもお主に非がある。謝って来い」
青年の後を追うのをためらう来歌に久遠は有無を言わせない態度で言う。それは威圧ともとれたかもしれない。それでもためらう来歌に久遠は小さくため息をついた。
「来歌よ。人は“神”というものを信じない。しかし、それでも人は時に神に縋る。何故だかわかるか?」
まるで幼い子に言い聞かせるような久遠の問いに来歌は小さく首を横に振る。
「どうしようもない状況でも、人は何とかしようとあがくからだ。例え、死がまぬがれぬ状況でも人は何に縋りついてでも生きようとする。醜いまでにな。我からすればそれは、人の特権のように思える。永遠を生きられる我等はそこまで縋りつきはしないからな」
久遠はそこで言葉を切る。この先の言葉を大切に思っているかのように。
「だから……だろうな。あそこまで眩い輝きが持てるのは。来歌よ。必ずしも生きる時間が命の価値に繋がるわけではない。長ければ長い程よいと言うわけではないのだ」
言葉をかみしめる様に久遠はゆっくりと言葉を紡ぐ。不思議と来歌の心の中に一つ一つの言葉が染みていくような感じがした。
(なんだろう……。この心の中に言葉がじんわりと伝わる感じは。なんとなくわかるような気がする)
来歌は久遠の言葉を聞きながら少しの感動を覚えた。
「それ故に我等は時折気まぐれに手伝う。少しでも輝いてくれるように、と願いをこめて。お主もあの人間の闇を払ってやれ」
だから早く行けと久遠は来歌に手で払うしぐさをした。
来歌は頷いて走っていった。あの青年のところへと。
「ふぅ。まったく……世話の焼ける。おかげでしゃべり過ぎたではないか……」
久遠は一つため息をこぼすと顔を右手で覆った。手の隙間から少し赤くなった顔色が見えた。
俺、山田 太郎はどこにでもある様な人生を二十五年歩んできた。このどこにでもある様な苗字にあわせて日本を代表するようなありふれ過ぎる名前はまったく名付ける気無しな両親に付けられた。なんでも、普通に育ってくれればそれで良かったのだそうだ。って言うか『太郎』ってなんだよ。『太郎』って。花子さんと並ぶくらいに例に出されるじゃねえかよ。それのおかげで今までにどれくらいからかわれたことか。本当だったら泣いてるぞ?
小、中、高校と常に並以下の成績だった俺は絶望を覚えるには充分な時間を過ごしてきた。学生時代の大半はこの『太郎』っていう名前で随分からかわれたものだった。どう頑張っても思うように行かなくって諦めたのはいつの事だっただろうか。
つらつらと取り止めのない事を考えていた俺は誰もいない公園のベンチに腰をかけて空をぼんやりと見上げていた。かれこれあのとんでもない少女に出会ってから三時間は過ぎていた。つまり、二、三時間はここでぼうっと物思いにふけっていた事になる。
あの来歌とかいう変な少女には正直悪いことをしたなと思う。いくら意味のわからないことを言われたからってあそこまで怒ることはなかったなと自分でも思うくらいなのだ。
——ホントウニソウオモウノカ?