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- 第肆話「教え子見習い」 ( No.33 )
- 日時: 2010/09/11 09:43
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: 3mln2Ui1)
- 参照: 何か最近申し訳なさで泣ける
更新が遅れてしまって申し訳ない(土下座 それでも、しようがねえな見てやるよと言うお心が広い方どうぞ。
第肆話「教え子見習い」
我は今まで長く生きてきた。だから教え子だってたくさんいる。しかし、どんなに長く生きようとも予測できない事態が起こりうる事はわかっていた。己の“未来”を滅多に視ない我はそうだろうと思う。
しかし、ここまで予想外の出来事が起きるとは正直、我だって驚くぞ?何せ、教え子(予定)を追いかけてみて最初に見た光景。それは教え子(予定)が助けるはずの人間へ向けて神術『浄火』を放っていたのだからな。まぁ、百歩譲って、邪《よこしま》を浄化するために放ったとしよう。しかし……それにしては火の勢いが少しばかりいや、物凄く強すぎはしないか?
『浄火』によって作られた炎は人二人は軽く飲み込みそうな大きさだった。
そして、飲まれる人間(確か名は山田だったか?)は飲まれる直前に、
「こんな変な死に方は嫌だああぁぁあぁぁあぁ!!!!」
と大絶叫した。その声には悲鳴に近いものがあった。思わず不憫だなと思ってしまう姿だった。
そして、それを見た来歌が聞き捨てならないことをボソリと呟いた。
「あ。やばッ」
と。つまり、これは来歌が神術の制御を失敗した結果という訳か。当然、来歌には止める知識も術もあるはずなく、このまま傍観し続けるとあの山田とか言う奴が死ぬことになる。我は一度助けると決めた命は助ける主義だ。我も一応神なのだから。
来歌の放った浄化の火は見事、山田と邪《よこしま》に直撃し、
「ギィヤァアアアアァァアアアアァ!!!」
というどちらが言った悲鳴か判らない(多分両者だと思うが)声が公園内に響いた。近所迷惑になる声だったが、こっそりと張った結界で多分この公園の外には聞こえていないだろう。
山田の体にまとわりついていた黒いもやみたいのが逃げるように離れていった。このもやみたいのが邪《よこしま》なのだ。邪《よこしま》は簡単に言ってしまえば悪霊だ。怨念や未練が強い霊がなるもので負の感情を強く持つ人間に憑くのが一般的だ。中には例外ももちろんいる。邪《よこしま》は恨み、憎しみといった人の負の感情を吸収し果てはその人間の体や魂までも喰い尽くす化け物。化け物といっても人のなれの果て。人であった者たちだ。
神はそういう者たちを浄化する役目がある。放置したりしたら奴らは実体を持ち、人格を持つ。人格を持つようになると格段に力が強くなり、手強くなってしまう。と言っても普通の邪《よこしま》にも多少理性と感情があったりするのだが。
邪《よこしま》が出て行った後でもまだ山田の体には『浄火』の炎が残っていた。
「神術、『流水』」
我がそう呟くと目線にいた山田のところに大量の水が滝のように流れ落ちた。大量の水を被り、炎が消えたところにすかさず唱える。
「神術、『癒光』」
山田のところに柔らかい温かな光がさし、山田のやけどがみるみるうちに治り消えていく。何事もなかったかのように山田の怪我は跡形もなく治った。
「うわぁ……」
と山田が何やら感嘆の声を上げた。神様って本当にいたんだ……と惚ける様に呟くので少し一喝してやった。
「このたわけ!そのような事はいいから下がっておれ。命の大切さ、少しは分かったのだろう?」
そう問うと山田はしきりに頷き、後ろの方へと下がって行った。どうやら見守るでいるらしい。まぁ良いが。
山田と入れ替わるようにして来歌が近づいてきた。我は近寄ってきた来歌の頭にとりあえず、正義の制裁と言う名の拳骨を食らわせてやった。ガツンッととてもいい音が聞こえ、その後に何やら来歌がわめいていたが無視した。心がすっきりしたところで未来を視ることにする。来歌があの邪《よこしま》に勝てるかどうかを。まぁ、あの邪《よこしま》は弱い方なのだが。
心を無にして目を数秒つぶればいい。それだけでこの後一時間分の未来を視ることが出来る。
——ズキッ