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第肆話「教え子見習い」 ( No.48 )
日時: 2011/01/22 18:53
名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: 5Yz4IUWQ)
参照: 誠心誠意、書きます。

毎回毎回、見ていただいて作者冥利につきます。ありがたいです。……閲覧数が500超えたら何かやろうかな?ではどうぞ。






「それよりもほれ、もう決着がつきそうだぞ」

 来歌が戦っている方向を指差した。







 来歌は必死に走っていた。時折、邪《よこしま》による黒の魔弾を器用に避けながら。来歌は分かっていた。普段使っている術の威力では邪《よこしま》は倒れないことを。

 黒の魔弾は地をえぐり、石を飛ばしながら小さい傷ながらも確実に来歌を痛めつけてくる。腕や足に徐々に増えてくる傷に顔をしかめながらも来歌は神力を練りながら反撃の機会を待っていた。来歌の神術の習得数の少なさには訳がある。

 そして反撃の機会は訪れた。邪《よこしま》の攻撃に一瞬の隙が出来たのである。来歌は邪《よこしま》の横に光の蝶を見た気がしたが気にする余裕はなかった。

「私の必殺。いっくよーー!!全てを浄化する聖なる炎よ。神術『浄火』!最大出力!!」

 来歌が大きな声で唱えた。すると伸ばした手から先程の浄火の炎とは比べ物にならないくらい大きい炎が出て、それはいとも簡単に邪《よこしま》を飲み込んだ。

 この『浄火』は来歌の全力の一撃。来歌は自分の分というものをわきまえていた。全くもって才能のないのならば、広く浅く覚えても意味がない。一撃に百の威力を持たせなければ生きていけない。一種の悟りにも似た考えだった。それだけ、『神』とは厳しい。

「ギィイヤアアアアァアァアアァアア!!」

 公園の地面を焦土と化す勢いの一撃をうけた邪《よこしま》は耳障りな声でけたたましく断末魔を上げてそのまま塵となって空気に霧散して消滅した。

「やったーーー!!先生!!見ましたか!?いまの!」

 かっこ良くなかったですか!?と、うざったいほど
に浮かれまくる来歌に我は、

「すまん。見ておらぬ」

 とそっけなく答え、邪《よこしま》を惑わした光の蝶の姿をした己の式を小さく呪を呟いて消した。光の蝶は光のりんぷんを散らしながら空に溶けるように消えた。来歌と山田は気づかない。

「えーーーー!?そ、そんな……。くっ。や、山ちゃんはみてくれたよね!!?」

「や、やまちゃん!??いつの間に!?」

 うなだれたかと思うと次の瞬間には山田に詰め寄る来歌。山田はいつの間にかに付いた『山ちゃん』なるあだ名に戸惑うばかりだ。いつまでもじゃれ合う二人(正確には片方が突っかかっているだけなのだが)を我はいささか呆れた目で見た。割とあっさりと片付いてしまったことに多少の違和感は感じたが。











 所かわって公園から500メートル離れた上空。その男は上手く久遠たちに見えない位置にいた。

「クククク。ちゃんと仕掛けは効いているようですね。長年かけて準備した甲斐がありますよ」

 その姿は見る者に不審をあたえる姿だった。黒一色のボロボロの古ぼけた和服に、首から下には乾いた血痕が付着したこれまたボロボロの包帯が巻いてあった。腰まである不ぞろいの黒髪はぼさぼさで輝きを失っていた。肌は死人のように青白く、瞳だけがギラギラと欲望で輝いている。

 数百年前の幽霊を思わせるその男は背が高く体つきも一般の人よりもがっしりとしていた。口調と外見にここまでギャップがあるの人も珍しい。

 恐ろしいまでに低いその声で男はさも愉快そうに、

「じっくりと壊してあげますよ。神様。その未来を視るその目を絶望だけを映すようにしてあげますよ」

 にたぁと口角を持ち上げ哂(わら)った。見るだけで寒気がするような笑みだった。

「あの時以上に楽しくなるといいですねぇ」

 凶悪犯罪者だって震え上がるような声音で男は告げた。

 下にいる「未来」を司る神とその教え子へとむけて。