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第伍話「トラブルメーカー」 ( No.50 )
日時: 2011/03/06 18:54
名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: 5Yz4IUWQ)
参照: 亀よりもアリよりも遅い更新。

遅くなってすみません。もう、この小説は一ヶ月に一回見ればそれで事足りると思います。チッ、屑作者め。しょうがねぇ、見てやんよという宇宙よりも御心が広い方はどうぞ。







第伍話「トラブルメーカー」

 神と人との違いはそんなでもない。結婚だってするし、子どもだって持てる。実は神にも種類があって「成神《なるかみ》」と「至神《ししん》」の二つだ。「成神」は夫婦となった神達の子に創造主がお創りになった魂を持たせた者。今生まれている神の大部分はこれにあたる。そしてもう一つが「至神」。至る《いたる》神と書いて至神と読ませる。人の魂が生前厳しい試練を乗り越え、磨きをかけ、輝きが唯一無二の物になったらなると言われている。それ故に稀少だ。噂によると最初に創造主がお創りになった「第一世代」と呼ばれる神もこれに該当するらしい。「至神」には天才も多いとされるが。

 そして来歌もその「至神」の一人だ。まぁ、出来は残念だが。ああ、この世はそんなに優しいわけではないらしい。

 『執務舎』と呼ばれる建物の一室。いわゆる食堂のテーブルに来歌は突っ伏しながら唸る。食事が必要ない神々だって食事をとる。娯楽としてだが。長いテーブルではなく、小さい最大四人で使う四角いテーブルが広いこの部屋にたくさん置かれていた。ちなみに今丁度朝食の時間で泊り込みの神々が食べに来ていた。無論来歌は違うが。

「ゆず〜。どうしよう?私、駄目かも」

「何よ、今更。いつもの事じゃない。あなたのそのピンチは。よかったわね、学校一のトラブルメーカーの名は執務舎一に早くもレベルアップしそうよ」

「うぅ……。ちはや〜、ゆずが酷いよ」

「何を……今更。柚璃葉の毒舌は……標準装備だから……」

 来歌に「ゆず」と呼ばれた少女は神里 柚璃葉《かみさと ゆずりは》と言い、腰まである艶やかな黒髪と切れ長の目が印象的な優等生だ。かつて学生だった時は常に成績トップだったある意味来歌とは真逆の少女だ。そして来歌に「ちはや」と呼ばれ、ややゆっくりとした口調の少年は神田 千早《かんだ ちはや》と言い、柔らかい癖のある短い黒髪と常に眠たそうな目が特徴的だ。

 この三人は幼馴染で学生時代も様々なトラブルという名の事件を巻き起こし、解決し、もはや学校の伝説と化していた。とんでもない経歴の持ち主達である。

 仕事が始まるこの朝の時間に食堂に集まるのが三人の間で自然と決まった約束事である。

「それにしても、あなた凄いわね。かの有名な『未来』を司る神に弟子入りだなんて。意外な才能があったのかしら?」

「え?そ、そうかな?」

「うーん……。どう……だろ。あの人って『変人』のレッテルが……強いから。気まぐれかも。それよりも……来歌」

「ん?」

「何故……未だに学校の制服の……ままなんだい?」

 とても気になるんだけど、と服を指差された来歌は目を見開いた。そして何やらぶつぶつと呟く。別に私だって好きで着ているわけじゃ……とかこれも先生のせいなんだからとかなんとか。とても同情を誘う姿だった。

 来歌の姿は上は和服、下はミニスカートという中々に奇天烈な格好をしていた。対して幼馴染の二人の方はそれぞれ弟子衣装と呼ばれる和服を身にまとっていた。それぞれの役割の部屋にそれぞれ弟子の衣装が存在する。見分けるためとからしい。

「あなた弟子衣装はどうしたの?まさか……貰えなかったとか」

 柚璃葉の止めの一言で来歌はグハッと胸を押さえた。サクッという音が聞こえたのはあながち幻聴ではないだろう。

「ふ、フフフフフフ。ああ!そうですとも!!この来歌ちゃんは弟子ではありませんともさぁ!弟子になるまでお預けなんだから!イッエーイ!!来歌ちゃんは永遠の十五歳☆」

 不穏な笑い声をしたかと思うと変な口調とともにハイなテンションに陥った。キラッと効果音がついたピースをおまけに。

 すかさず柚璃葉はどこからともなく出したハリセンで来歌の後頭部を、

「早く弟子になればいい話じゃない!!馬鹿、ちょっとは落ち着きなさい!!」

——スパァアアァン!!

 と叩き(殴ったの方が近い)爽快な音を繰り出した。

「いたぁああい!」

 来歌は本気で痛かったのか涙目で訴えた。

「つまり……どん底の人間見れば元気になる?」

 千早の突然過ぎる提案に二人は騒ぐのをピタリとやめた。

 なぜそうなる?と二人の心が一つになった瞬間だった。