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Re:     Tears...... ( No.31 )
日時: 2010/08/03 17:49
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)

002


ガチャガチャッっと、鍵の閉まっている家に乱暴に鍵を開けて入った。途端に涙が溢れだす。その涙は玄関の廊下に大きな染みを作った。
「何で、何で柚希なの……!?」
柚希より私の方が大地と一緒にいた時間は長かったのに。柚希より私の方が大地と仲が良くて近かったはずなのに。
「いつの間に、柚希に惚れちゃったの……??」
家も隣で、いつも一緒で、いつも遊んでた大地。傍にいて、笑いかけてくれるのがうれしかった。頭をポンポンと、軽く叩く仕草でさえもうれしかったのに。
「もう、そんなことをしてくれるのは私じゃないんだね」
柚希、なんだよね。
「ごめんねっ……」
大地、好きになってごめんね。柚希、嘘ついて黙ってて、ごめんね。二人とも大好きだから。だから、二人が幸せになることを選んだの。
これでよかったの。これで。
「二人が、幸せになれば……」

——いいの。

——————
————

「大地ーー!? 早くしないと遅れちゃいますよ?」
「わーってるってば!!」
私は朝方だから、いつも大地を起こしに行く。なるべく、普段通り。変わらないように。
絶対に、口に出さないようにしなきゃ。すべて台無しになるから——……
「さと? どーかしたのか?」
「う、ううんっ! ごめんなさい、ぼーっとしてました!」
慌ててほほ笑み、大地は自転車に乗る。私は後ろに乗る。恋人じゃないのに乗るなって?
……今は、それどころじゃないんです。
「大地っ!! 後10分ですよ!」
「おっし、さと。しっっかりつかまってろよ? マッハで行くから!」
私はぎゅっと大地の腰につかまり、大地は自転車をこぎ始めた。久しぶりの感覚に、心臓の鼓動が早まるのは止められなかった。

——無論、私たちは徒歩通学なので、自転車で行くと……
「矢納ー? 蒼井ー?? あれほど自転車で来るなって言ったよなー?」
はい、案の定先生に捕まりました。
「だってよー、こいつ途中で鞄落とすんだぜー?」
「大地ー、鞄持ってろって言ったのはどこのどいつでしたっけー?」
笑顔で言い返す。あえて大地の顔は見なかった。
「蒼井は1回目だから見逃すが。矢納は校庭10周な」
「はあ!? マジで勘弁ー!!」
体育教師に捕まったことにより、大地は校庭10周が決まった。

「……——せめて、これくらいの抵抗はさせてよ?」
誰もいない廊下でそう呟いた。
わざと鞄の荷物を落としたのは、柚希と会う時間を減らそうとする、無駄なていこうだった。



(大地が振り向いてくれるなんて、あり得ないって分かってたのに)