コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Tears...... ( No.41 )
- 日時: 2010/08/03 17:55
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
003
「慧美ぃーー!!」
「わわっ、ちょっと柚希ー。重いですよ!」
教室の扉を開けた。途端に飛び込んできた柚希。いつになくハイテンションなのはきっと……。
「ねえっ、知ってた? 明日ね、転校生が来るんだって!」
そんなことには興味がない。と言うより、関心がないとでもいうのかな。まあ、昨日の今日だから何に対しても臆病、消極的になってるのだろう。
「しかもね、男子だよっ。かっこいい人かなー」
その言葉にドキッとした。大地がいるのに、転校生にも気があるの……? ちょっとだけ怒りがわいてきたけど、頑張って気持ちを押し込めた。
「まっ、大地君には劣るけどねー。やっぱ大地君っ……かっこいい」
柚希は顔を赤くさせて運動場を走っている大地に目を向けた。
恋してる、って顔してる。だったら、転校生なんて興味ないんじゃないの? 大地が一番なんでしょ? だったら大地だけ見てて。
なーんてね。意地悪な気持ちにもなるよ。
「ふふっ、ほんとに大地が好きなんですね」
「……うん、大好き。誰にも負けないくらい」
「そう、ですか……」
ごめん、柚希。私の方が大地を想う気持ちは強いと思うよ。物心ついた時からずうっとそばにいて。いつの間にか恋をした。
ごめんね。もう少しだけ、大地を想っててもいいかな——?
——この時忘れていた。転校生が男の子だってこと。
そして、私たちにとって恩人で、大好きな人との再会になるなんて。
そんなこと、分かるはずもなかったのだった。
時間は着々と、幸せへ。そして、崩壊へと歩み続けているのだった。
——————
————
「さと!!」
放課後、HRが終わって真っ先に大地は私の机に手をついた。日に焼けた肌が目の前に現れる。
「あれ、今日部活はないんですか?」
「今日は、サッカー部は休み」
大地はサッカー部に所属している。ちなみに私は帰宅部である。
「なあ、〝二人で〟ちょっと出かけよっか!」
ドクンと、胸が高鳴った。それ、本気で言ってるの?
しかし次に発した言葉に、私の心が悲鳴をあげそうになった。
「柚希の誕生日近いじゃん? だからプレゼント買おうかと思って。協力してくんない?」
———ずるい。
そうやって、期待させて。結局柚希の為なんじゃない。ずるいよ。私の気持ちなんて一ミリも知ったこっちゃないんだろうね。
「あー……ごめんなさい。今日は無理です」
必死になって考え出した答えがこれだった。二人で選んだプレゼントを、大地に渡してほしくない。と言うよりも、きっと柚希は
『大地君のくれるプレゼントなら、何でもうれしい』って言うもんね。
「ふうん……。さとの母さん、仕事忙しいのか?」
「う、うんっ。だから、たまにはしっかり家事をしないとと思いまして!」
口から出まかせだ。でも半分はあっている。最近洗濯物が溜まりがちだったのだ。
「じゃあ仕方ないよな! また暇なときに!」
そう言い、ひらりと手を振って柚葵の机へ向かった。そして、二人仲良く手を繋いで、教室を出て行った。
「ひゅーひゅー、美男美女ー!」
クラスの男子がからかった。それだけのことなのに、泣きそうになった。
(誰も、人の心の中なんてわざわざ見ようとしないでしょう。自分のことで精一杯で。)