コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Tears...... ( No.51 )
- 日時: 2010/08/03 17:58
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
005
チュンチュンッ。
雀の鳴く声が、引っ切り無しに聞こえる。それを目覚ましに、私はベットからのそのそと起き上がった。
千早が引っ越してきた次の日。早起きして千早と一緒に学校へ行こうと決めていたのだった。……不純な動機じゃない。千早が昨日、「学校までの道のり覚えないと」と言ってたから。
「うん。だって、引っ越してきたばかりだもんね」
「さと。さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」
階段を下りていたので、思わず落ちそうになった。だけど、手すりを持ったので、間一髪助かった。
「——あ、彗兄……帰ってたんだね」
蒼井彗(アオイ スイ)。某有名大学の2年生。つまり、4歳年上である。家から大学は近いのになぜか一人暮らしをしている変わり者だ。
「ああ。しっかし、勉強勉強疲れるよなー。何であんな大学入っちまったんだろ?」
「彗兄頭いいもん。それにかっこいいからね。うちの高校でも何気にファンがいるよ」
彗兄が通う大学は、私の通う高校の真向かいにあるため、大学生と高校生が道で会うのは珍しくない。第一、窓からちゃっかり見えちゃうわけだしね。
「あーマジで!? でも、やっぱさとが一番可愛いっ」
なーんて、彗兄はびっくりするくらいのシスコンだったりするのだ。
「褒めても何も出ないよ。そんなことより、私学校行かなくちゃ」
抱きつこうとする彗兄を避けて、洗面台で髪の毛をくくり始めた。私の髪は何気に腰まである。だけど、いつも後ろで一つにお団子しているから、髪をほどくと皆に驚かれる。
多分、髪をほどいたのを見たことあるのは、彗兄と大地くらいだろう。
「さとー? 学校遅れるぞー?」
腕時計を見ると、7時20分。大地は朝練だからもう行っている。私には関係ないけど…。
「彗兄ありがと! すぐに行くからね!」
「おー、でも休んでくれても———いだっ!?」
ふざけた事言ってるから腹いせに足を思いっきり蹴ってやった。痛がる彗兄を無視して、玄関の扉を開けた。
ピーンポン
〝はい〟
「あの、蒼井慧美ですけど……。千早いますか?」
〝あ、あの慧美ちゃん? まあまあ……すぐ呼んでくるわね!〟
言わなくても分かると思うけど、おばさんとは何度も面識がある。家に遊びに行って、よく話したもんだ。
ガチャ
「あれ、さとー? どした?」
「えへ、一緒に行こうと思いまして! 迎えに来ました」
そう言うと、まじまじと私の方を見た。不覚にもドキッとした。な、なんだろう……?
「さと、お前しゃべり方……。何で敬語なの?」
ああ、そっか。小さいときはタメ口で普通にしゃべってたから……。
「小学校の高学年くらいから、なんとなく敬語で話すようになってまして。癖になったんです」
敬語になった理由は自分でもよく分からない。
「ふうん……そうなんだ。ってか、早く行かないとヤバくね?」
時計を確認する。8時12分。予冷は8時半だから、歩いてギリギリくらい。
「や、やばいですね。走って行きましょう!」
私は千早を置いて、走り始めた。
「あ、待てって!」
「早く! 遅刻しちゃいますよ!」
こんな会話に、小さい頃鬼ごっこしたなーって思い出した。その時は、私すぐに捕まっちゃったっけ。
「さとっ! 行くよ!」
ぼけっとしていた私の手を引いて、千早は走り出した。あ、千早の手大きくなってる……。背だってそうだ。小さい頃は同じくらいだったのに。
10年越しに再会した千早は、驚くほど〝男の子〟になっていた。その事実に、なぜかドキッとした。いや、まさかね。だって私が好きなのは大地……。
でも、あきらめなきゃいけない。でも、あきらめられない。私、自分自身の気持ちが分からない。
——高一初夏、急展開の予感です。
(好き、って簡単に言えたらいいのに)
※7月20日 修正 最後の行の、高二初夏→高一初夏の間違いでした。
これからは間違えないように気を付けます><