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Re:     Tears...... ( No.73 )
日時: 2010/08/03 19:02
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)

006


「慧美。千早君からだって」
横の方からこそっと回されたのは、ノートを破った切れ端だった。そっと紙を開く。
〝昼休み弁当一緒に食べない? 千早〟
「千早……」
ちょっとだけ、嬉しかった。最近大地たちは二人で食べてるから、いつも一人だったのだ。
〝いいですよ。屋上にしましょうか。 さと〟
返事を書き、回してもらった。3つ隣の列の1番後ろ。私と千早は横で同じ列だ。ちらっと千早を見ると、目があった。ドキッ。
ぱっと目を逸らす。って、何意識してるんだろう、変なの。とにかく、ちょっとだけハッピーな気持ちのまま、4時間目の授業を終えた。ちょっとだけ、ね。
「はい、授業おわります。礼」
「さとー! 行こうぜ!」
即座にやってきた千早。
「あ、ちょっと待ってて下さい!」
私は鞄の中から弁当箱を取り出し始めた。
ゾクッ。
ん? なんか寒気がしたような……気のせいか。
「えー、蒼井と名取ってそういう関係な訳?」
「嘘マジ!? 付き合ってんの?」
噂に敏感な男子がそう言った。たちまち、噂が広まるのは言うまでもない。……って!!
「千早、何で否定しないんですか? 付き合ってないって——」
「いいじゃん、噂になっても」

——え?

「それより早く行かねーと、昼休み無くなっちまう」
千早はそう言い、素早く私の手を取って屋上に向かった。でも、心の中でさっきの言葉が連呼している。……そういう、意味だよね? でも、千早に限ってそんなこと……。

ゾクッ。
「っくしゅん!!」
「さと、大丈夫か?」
ああ、まただ。さっきから寒気がすごい。屋上にいるからかもだけど。くしゃみまで出てきた。
「へ、平気ですよ。鼻がムズムズしただけです」
「……辛かったら、言えよな?」
千早が私の顔を覗き込む。心配そうな顔つきだ。
「分かってますよ? でも大丈夫ですから……」
あんまり、心配されても気を使われていやだものね。
「そうか? なあ、マジで大丈夫?」
「あはは、大丈夫ですよー。心配しすぎです!」
なんて言ったけど、本当にヤバくなってきたかも……。頭痛までしてきた。でも、我慢しなくちゃ。心配かけないように。なるべく普段と変わらないように。
「あ、そろそろ授業始まる! 戻ろうか」
「はいっ! いきましょう!」


——そう、〝気持ちを悟られない〟ように……。



(さあ、偽りの私を作っていよう)