コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Tears...... ( No.124 )
- 日時: 2010/07/21 16:06
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: 9Bqwph5S)
011
「おじゃましましたー! 千早君またねー!」
「……んー。じゃあな」
あーウザい。今日初めて会ったくせに名前で呼んでんじゃねえよ。なんてことは口に出せない、絶対に。
「あれ。彗さん、遅いなあー」
電話をしてから、およそ2時間。大学の講義が長引いたのか。ちょっと遅い。
プルルルルッ
ポケットにいれていたケータイが鳴った。2コールなった後、俺は電話に出た。彗さんからだ。
〝悪い千早君っ! 今日は急の講義があってさ。今から帰るから〟
「あ、はい。分かりまし……———」
プツッと、返事する前に切れた。大学ってゆっくりしてそうと思ったんだけど。まあ、有名な大学だからな……。
電話の向こうから、彗さんの疲れた顔が見えた気がした。
——————
————
「ちーはーやー!! 学校行きましょー?」
あれから4日。すっかり元気になったさとは今。母さんに引きずり込まれてか、家の中にいる。
「そうよ千早。あんまり慧美ちゃんを困らせるんじゃないのっ!」
「うるせーな……言われなくても分かってるよ」
———痛いくらい、分かってんだよ。
「それにしても、慧美ちゃん綺麗になったわよねー。小さいときはこーんなに小さくて可愛かったのに」
「おばさんそれ、今は可愛くないって言いたいんですかー?」
いや、今でも十分可愛いだろ。何気に母さんたちの会話に耳をすましてる。
——って何やってんだよ、俺。
「あら、そんなんじゃないわよー。千早と違って、大人っぽく育ったって言いたいのよー」
「あの、聞き捨てならないんですけどー?」
豪快に笑う母さんと、くすくすと、清楚に笑うさと。これじゃまるで、月とすっぽんじゃん。
あ、もちろん母さんがすっぽんな。って、すっぽんに失礼か。
「さとー、学校行こうぜ!」
「はいっ、おばさん! 久しぶりに話せて楽しかったです! 行ってきます!」
さとは、自分の家のように元気に挨拶して、家を出て行った。
「んじゃ、俺も行ってくる」
さとを追って、俺も家を出た。
咲きはじめた紫陽花についた水滴が、太陽にきらりと光った。
(紫陽花は、大地なしでは生きていけないの)(そんなことくらい、分かってる)