コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Tears...... ( No.146 )
- 日時: 2010/07/23 17:18
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: 9Bqwph5S)
002
「……ん? これはどういう事でしょう?」
次の日の朝。教室に入るなり、この言葉を発してしまった。
無理もない。いつもバカップルで、周りにからかわれている大地と柚希が、お互いにそっぽを向いている。
「あ、さと……。おはよう」
私に気が付いた柚希は、悲しげに笑った。そして、
「ちょっとだけいいかな?」
返事をする前に、私の手を引いて屋上につながる階段の淵に座った。なにがあったの、とは聞かなかった。
……ううん。聞けなかった。大地と何かあったのは目に見えて分かるし、あまり聞きたくなかったから。
「あのね……大地君とね、喧嘩しちゃったの。私が悪いんだけど」
いつもハイテンションで、お節介な柚希は今。泣きそうな顔でぽつりと言った。きっと頼ってくれてるんだよね。
でも、その顔を見ると、胸が張り裂けそうになる。柚希が大地を傷つけたのなら、たまらなく怒りたくなる。
だって、私は二人が大好きだから。
「私、部室で大地君のケータイが鳴ったから持っていこうと思ったの。でね、ふとディスプレイを見たら……」
いったん話を切って、柚希はハンカチで目元を拭いた。上を向いて、はあっとため息をついてから、また話しはじめた。
「女の人の名前があったの。今考えたら、女の人の名前があったっておかしくないのに、私……怒鳴っちゃって」
ああ、そういう事か。すべてを理解した。
「なんていう名前だったんですか?」
「美空だったと思う」
美空ちゃんか……。美空ちゃんは、大地の妹の名前だ。年がかなり離れていて、今は小学校低学年だったと思う。
「柚希。美空ちゃんは大地の妹ですよ」
「えっ!? じゃ、じゃあ私……!?」
驚きように思わず笑みがこぼれる。言いたいことは、聞かなくても分かる。
「そうですよ。妹に嫉妬しちゃったわけです」
そう言ってから、少し考えて、付け足した。
「仲直りできるように、千早にも協力を頼んでみますね! 頑張りましょう」
(本当はそんなこと言いたくないんでしょ?)
心の奥底の言葉がかすめる。けど、いいんだよ。少しでも、大地と柚希が幸せになってくれたら……いいの。
二人が付き合い始めたと知った時に、誓ったんだから。
「慧美、ありがとうっ! 私も頑張るね!」
チャイムが鳴りそうだったので、走って教室に向かった。
(誓い=約束? いえいえ、誓いの方が残酷なんです)