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Re:     Tears...... ( No.152 )
日時: 2010/08/03 19:11
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)

003


「だからお願いですってばっ! ちゃんと話を聞いて下さい!」
放課後、大地に説得中。でも、柚希のことで、って言ったら無視して教室を出ようとするんだ。私だって、こんなこと本当はやりたくはなかったよ。だけど2人の為にと思って、頑張ってるのに。
「やだよ。どうせまた、妹だって弁解しても聞かねーんだろっ」
「それは私が説明しましたし、柚希は謝りたいって言ってるから……」
必死に言うのに、大地は振り向かずに吐き捨てるように言った。
「俺はもう、柚希はどうでもいいんだよっ!」

———どうして?

そのまま大地は去って行ったけど、私は呆然と立ち尽くしたままだった。『柚希はどうでもいい』? どうしてそんなことが言えるの? あんなに好きだって言っていたのに。私の気持ちも知らずに。
「酷いよ……馬鹿」
あ、やばい泣きそう。人がまだ何人かいるから、ここで泣いたらまた同情の目で見られちゃう。
「あ、慧美ちゃん帰るの? って、目ぇ赤いよ?」
「大丈夫です! 目にゴミが入っちゃって。じゃあ、また明日!」
またね〜、バイバイ! と言う挨拶を聞きながら、私は屋上へ直行しようとした。

ドンッ!

途中で、前を見てなかったからか誰かにぶつかってしまった。反動で後ろに倒れる。
「うわっ大丈夫——……って、さとじゃん!」
「え、千早……」
千早だった。まだ帰ってなかったんだ。
「さ、さと。泣くほど痛かった……か?」
「えっ嘘。泣いてます!?」
頬を触ると、冷たい感触。涙は間に合わなかった。泣き顔を見られたくなくて、顔を逸らす。しばらくの沈黙があったけど、どちらもしゃべろうとしなかった。
「———さと、こっち」
数秒後、我に返った千早は、俯いたままの私の腕を引っ張って屋上に連れて行ってくれた。
「———ごめんね」
多分、その呟きは聞こえてなかったと思うけど、何を言っていいか分からなかった。千早の優しさが辛かった。

「ごめんね千早……」
屋上について、涙を止めるのに必死だった。泣きたいけど、千早がいる。泣くな、慧美。我慢しなさい。と、呪文のように言い聞かせていた。
「——泣けよ」
「え……?」
千早の呟きは、ヒュッと吹いた風に消えた。
「泣けばいいだろ。俺の上着で隠しといてやるからさ」
千早の目は真剣そのもので。ブレザーをボスッと頭に掛けてくれた。千早のブレザーに顔をうずめ、千早の隣に座った。

途端に涙が溢れだす。

「っ……ごめんっ……ね」
「——うん」
千早は黙ってぎゅっと抱きしめてくれていた。千早の不器用な優しさが心にしみて。

そして、それは千早の心に傷をつける。分かっていたよ、それくらい。



(優しさなんていらない)