コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Tears...... ( No.178 )
- 日時: 2010/07/29 13:30
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
005
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tihaya side
悔しかった、憎かった。もどかしかった。
さとが初めて俺の前だけで泣いてくれたことが、うれしかった。
さとを振り回す大地が、憎かった。
そして、いろんな感情に振り回されている俺自身が、いちばん、一番……
憎かった。
——————
————
「なー、大地」
「なんだよ、千早。お前が話しかけてくるとか珍しいじゃん?」
バーカ。普通ならお前なんかに話しかけたりしないっつーの。さとのためだよ。
「放課後さ、時間あるか?」
一瞬きょとんとした顔になったが、すぐにニッと笑って、
「いいよ。教室でいいのか?」
そう言った。お前のほほ笑みも今では憎い。あ、これは意地でも表情には出さないようにしないとな。
「おう、悪いな。話があるからさ」
大地に負けないくらいにっと笑って席についた。それから、ちらっとさとを盗み見する。森澤と話していた。
「あの、慧美。大地君にその……言ってくれ、た?」
ああ、いきなり爆弾発言。ムカつくな。さとの気持ちを知らない森澤だから無理もないかもしれないが。
「——うん。でも、話聞いてくれなかったんです……ごめんなさい」
さとは申し訳なさそうに、ボソッと言った。さとが謝ることなんて、一つもないのに。むしろお礼をされる方なのにな。
「慧美。どうしてもっと強く言ってくれなかったの?」
「言ったけど、すぐにどっか行っちゃったので……」
森澤ははあっとため息をついた。イライラしているのが分かった。
「私じゃ話になんないから慧美に頼んだんじゃないっ。ちゃんと話つけてもらわないと、困るよ」
って、そっちが勝手に頼んだんだろーが。何逆ギレしてんだよ。って、心の中で毒づく。
——でも多分、これで折れるさとじゃないだろうな。
「何で柚希が怒ってるんですか? 本気で向き合わないといけないのは、大地になんじゃないんですか?」
「うるさいなっ。第一、慧美が何かいろいろ言ったから、また気まずくなったじゃないの!」
また、屁理屈言ってる。ちらっと大地を盗み見すると、無視して本を読んでいた。こっちもたよんねーな。
「確かに協力するって言ったのは私ですよ? でも傷つけたのは柚希だから、結局は二人で解決しなきゃいけないんです!」
「おい、そこまでにしとけって。皆見てるぞ」
しびれを切らした俺は、二人の中に入った。声が大きくなっていたから、皆の視線が集中していた。
気まずそうに森澤は顔を逸らし、教室を出て行った。さとは、ごめん、と言って席に座りなおした。
どうしたの? って数人に聞かれていたけど、何でもないと笑ってごまかしていた。
その後、6時限目まで森澤が帰ってくることはなかった。
(恋心って複雑)