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Re:     Tears...... ( No.227 )
日時: 2010/08/03 17:34
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)

第三章『cry(叫ぶ)』

001

satomi side.


私の心の叫びが誰かに届けばいいのに。私の気持ちを知って、傷つけばいい。
私は十分傷ついたのに、貴方たちが傷つかないのは不公平。
だから叫び続ける。愛を求めて……。

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夏休みも明けて九月。まだ残暑が厳しいけど、涼しくなった風が心地いい。だけど、私の心はどこかモヤモヤしている。
一カ月も前の花火大会の時の、千早の言っていた言葉。聞こえてない訳じゃなかった。聞こえていた。
『さとが、好きだから』
花火の音に掻き消されそうになったその言葉は、私の元に届いてしまった。だからずっと心の底はモヤモヤしたまま、夏休みを終わらせてしまった。

「慧美! 久しぶりだね!」
教室に入ってきた柚希は、目に見えて分かるほど焼けてしまっていた。
「久しぶりです、柚希焼けましたね。あ、サッカー部のマネージャーだからですか?」
「そうなの。日焼け止め塗ってもこの有様。まあ大地君が見れるからいいけどー」
思いっきり私を傷つけているのに気付いていない柚希。ノロケなんか本当は聞きたくないよ……。でも、最近ノロケが大分平気になってきた自分もいたり。
彼女は自分の腕を私の腕と並べてため息を吐いた。
「慧美は年中真っ白だよね。この夏どこにも行って無いの?」
「うん、まあ……。お母さんは帰ってこなかったので」
無理して笑ってるなって自分でも思った。彼女は申し訳なさそうに眉を垂れた。ごめん、という言葉と共に。
「でも、花火大会は千早と行きましたよ! 花火見るの久しぶりなので楽しかったです」
「へーえ?」
彼女は悪戯っ子みたいな表情でそう言った。そして、声をひそめて耳の横でそっと言ったんだ。
「慧美が千早君の事話してるとき、すごい嬉しそうな顔するよね」
私は顔が赤くなっていくのが分かった。
「……へっ、ななな何でですか!? そんな顔なんて——」
「してるよ。今だって顔が赤くなってる。図星でしょ」
何も言えなかった。この夏は初めて大地と遊ばなかった。受験生の時でも一緒に宿題をしたりしていたから。もちろん柚希付きだけど。
そしたら、すごく心が軽くなっていた。千早といるときは大地の事を忘れられたから。彼の笑顔を見るとほっとしたから。
でも、まさか恋だなんて。
「柚希、これって恋なんですか?」
彼女は目をぱちくりさせて、にこっと笑った。
「それは自分で決めることだよ。でも、友情以上の気持ちはあるかもね」
意味深な言葉を残してタイミング悪くチャイムが鳴ったので、その意味を聞くに聞けず、自分の席に座った。
千早の席を見ると、本を読んでいたらしい。珍しく眼鏡をかけていてドキッとした。こう見ていると頭が良く見える。実際頭が良くないのは夏休みに知った。
じっと見ていたからか、視線を感じこちらを向いた。そして口パクでおはよう、と言った。読み取れた自分がすごい。
おはようございます、と返して前を向いた。これ以上向いていると、さっきの柚希との会話を思い出しそうで。

本当は、好きを認めたくなかったのかもしれない。
千早を、大地を忘れるために利用してしまいそうだったから。



(これ以上好きでいるのは辛い)