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拙い愛も囁けない ( No.25 )
日時: 2010/08/09 16:27
名前: あさ子 ◆D2yUo.n7Ls (ID: ZZ5Hb1Lx)

 何事にも起点というものはある、というのが私の持論だ。
生物の始まりにだって起点はあるし、感情にだって起点はある。他者のことを嫌いなったり、好きになった時だって。何に対しても起点はあるに決まっている。

勿論、私と彼の付き合いの起点だってある。
彼の方から、好きだと百六十六日前に告げられた。二人きりの教室。外からは部活動を行う運動部の声が耳に入ったのを覚えている。
それに承諾の相槌をうって、めでたく私達は恋人の関係になったわけだ。

 だけど彼の思いの伝え方は私の持論に反していた。何故私に好意を持ったのか、私は彼に問うていない。だから心の中には常に、知りたいという欲が支配していて。
何度も彼に問おうとしては口ごもる。やはり、私も女という性に分類されるだけあって、なかなか踏ん切りがつかなかった。更に人生初の彼氏、というのも上乗せして、腹を割りきれずじまいで。

 しかし、人間欲には勝てない生物なのだ。
学校帰りの帰路で、日常会話に混ぜて問いてみた。どうしてあなたは私が好きなの、と。今日は楽しかったね、と言うように普段と同じ調子で。
すると彼は何かに弾かれたように目をまたたかせた。どうしたの、と聞き返される。やはり、内容が内容なだけに無理があったようだ。
「いや、そういえば聞いていないなあ、と思ってさ」
そう返すと、少し考えるふりをするように顎を拳に乗せて唸ってみせられた。それから、
「俺さ、好きっていうのに理由とかないと思うんだよ。本能が好きっていうから好き、じゃ駄目?」
はにかむ笑顔を向けられた。その笑顔に私も返す。自然な笑顔を意識した作り笑いを。

 本能が好きっていうから好き? そんなことあるわけないじゃいの。私のこういう仕草に惹かれて、だとかこういう表情に惹かれて、だとかいっぱいあるじゃない。
それじゃあ、私は何処を好かれたの? 今までの感情は何? 全部まやかしなの? 
一気に彼を信じられなくなった。脳内では疑問符だけが浮かぶ。

 その後のことは曖昧だ。確か彼も何処が好きか、と聞いてきた気がする。それに何て答えたっけ。嗚呼、思いだそうとしても霞がかっていて分らない。でも傷つけるようなことだけは言ってないはずだ。彼が笑顔で家に入っていったのだけは覚えているから。

“俺さ、好きっていうのに理由とかないと思うんだよ。本能が好きっていうから好き”

「安っぽい台詞。逃げ言葉よ、それ。何事にも理由がない筈、ないんだから。あんたは私のこと好きじゃないのよ」

ベッドに埋まりながら放った言葉は弱く、あっという間に消えていった。
嗚呼、だけど。

「それに同感してしまった私も彼のことが好きじゃないのかしらね」


(拙い愛も囁けない)



即興作品で申し訳ないです;
そして久々の更新ですね! やっとで更新できました^p^
また更新できない日々が続くかもしれないのであしからず。

後、近々長編を書くことになるかもしれません。短編ですらこの更新率の悪さなのに何を思っているのやらw
もし長編を上げたら、その都度宜しくお願いいたします。